年内に砲弾100万発をウクライナに供給可能か? 西側諸国の倉庫は空っぽ

By | March 18, 2023
年内に砲弾100万発をウクライナに供給可能か? 西側諸国の倉庫は空っぽ 1


エストニアは年内に砲弾100万発をウクライナに提供するよう要求しており「来週のEU首脳会談で何らかの決定が下される」と予想されているが、ドイツのHandelsblatt紙は「仮に提案が承認されても西側諸国の倉庫は空っぽだ」と指摘している。

もし攻勢が失敗すればウクライナだけでなく欧州全体の先行きが怪しくなるしかなく、どうやって100万発の砲弾を確保するのが鍵だが、、、

レズニコフ国防相はEU加盟国に宛てた書簡の中で「利用可能な砲弾の数に制限がなければウクライナ軍の砲兵部隊は1ヶ月間に56.4万発の砲弾を使用できる。我々の計算では戦闘任務を成功させるのに最低でも月36.6万発の砲弾を必要としているが、供給不足のため砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分しか使用しておらず、これはロシア軍が使用する量の1/4だ」と訴えており、EUに対して月25万発の砲弾を要求している。

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出典:Сухопутні війська ЗС України

1ヶ月間に56.4万発の砲弾を使用できるという言及は「ウクライナ軍が保有する各種榴弾砲・自走砲の発射可能なキャパシティ(1ヶ月間)」を示唆しており、レズニコフ国防相は「月平均で11万発の155mm砲弾をウクライナ軍は消耗している」とも明かしているため、砲兵部隊は発射可能な砲弾量の20%分=11万2,800発分しか使用していないという言及は「155mm砲弾」のことを指している可能性が高く、ロシア軍は月平均45万発もの152mm砲弾を撃っているという意味だ。

このニーズを満たすためエストニアは2023年末までに100万発の砲弾をウクライナに提供するようEU加盟国に要求しており「来週のEU首脳会談で何らかの決定が下される」と予想されているが、ドイツのHandelsblatt紙は「仮に提案が承認されても西側諸国の倉庫は空っぽだ」と指摘している。

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出典:U.S. Army Photo by Dori Whipple, Joint Munitions Command

欧州企業が1ヶ月間に生産できる155mm砲弾の数は月2万発~2.5万発に過ぎず、仮に生産分を全てウクライナに回しても2023年末までに供給できる数は最大22.5万発で、生産量を引き上げるにもしてリードタイムが発生するので2023年末までに100万発の砲弾を新たに用意するのは不可能なため「各国の備蓄分を解放しろ」という意味なのだが、もう欧州諸国の備蓄には自国の安全保障に必要な分しか残されていない=余剰備蓄が尽きており、EU域外からの調達に目を向け始めているらしい。

西側最大の砲兵戦力(155mm規格の榴弾砲や自走砲を3,000門以上)を保有している韓国軍の備蓄には米軍備蓄を超える量の155mm砲弾が眠っていると期待されているのが、Handelsblatt紙は「北朝鮮の脅威やロシアとの関係を理由に備蓄解放を消極的だ」と報じており、このままでは「2023年末までに100万発をウクライナに供給する」というアイデアは絵に書いた餅で終わってしまう。

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出典:Public Domain

さらに問題なのはウクライナ支援に対する批判が米国内で高まっている点で、共和党から大統領候補として指名される可能性が高いロン・デサンティス氏は「ロシアとウクライナの戦争は侵略戦争ではなく領土紛争で、米国の国益に影響を及ぼさない」と発言、Handelsblatt紙は「このような発言は政権交代の実現でウクライナ支援の縮小や打ち切りを示唆させるためロシアに希望を抱かせる=2024年の大統領選挙まで戦いを引っ張れば状況に変化が生まれるという意味」と指摘している。

つまり欧州にとって「ウクライナが2023年中の攻勢で勝利を得られるが今後の安全保障に大きな影響を及ぼす」という意味で、もし攻勢が失敗すればウクライナだけでなく欧州全体の先行きが怪しくなるしかなく、どうやって100万発の砲弾を確保するのが鍵だが、経済効率を犠牲にしない範囲の取り組みを維持するなら望み薄だ。

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出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.

因みに英国は「欧州平和ファシリティ(EPF)の資金を活用した155mm砲弾の共同購入に参入できない」と嘆いており、これはEUから離脱した英国が「エストニアの提案に協力できない」と嘆いているのではなく、EUから離脱したため「EPFの資金を活用した155mm砲弾の調達先から英国の防衛産業が除外される」という意味である。

砲弾の増産に必要な原材料は十分過ぎるほどある、問題は工作機械の入手性
EU代表、ウクライナに砲弾を送るためには備蓄分を解放するしかない
実現が難しいアイデア、EUの155mm砲弾共同購入に非加盟国も参加可?

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України



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