五輪前に急拡大のキャッシュレス決済 業者乱立にリスクも


 スマートフォン決済をめぐる相次ぐ不正利用の発覚で、キャッシュレス決済事業者の急拡大による安全面のリスクが改めて浮き彫りになった。政府の推進策に加え、2020年東京五輪・パラリンピックに向け急増する訪日客を取り込む動きが活発化したことで、決済手段や業者が乱立。規制やセキュリティー対策が遅れる中で海外企業と連携を進める業者も増えており、リスクは高まっている。

 スマホの普及や政府の規制緩和などで、ヤフーやLINE(ライン)などIT系企業だけでなくコンビニエンスストアなど多業種が参入し決済分野の競争は激化。クレジットカードや電子マネーなども含むと、キャッシュレス決済の手段は数え切れないが、業者の乱立はかえってキャッシュレス決済の利用者を減らすとの見方もある。日本銀行の雨宮正佳副総裁は5日の講演で、「消費者がどの決済手段を選択すべきか迷うケースも多い」と指摘した。

 一方、訪日客や海外での利用に対応するため、海外の企業やサービスと提携する動きも加速している。ラインが中国のスマホ決済サービス「微信支付(ウィーチャットペイ)」と連携するほか、ソフトバンクとヤフーなどが出資する「ペイペイ」も中国の「支付宝(アリペイ)」と連携。中国からの訪日客が自国のスマホ決済サービスを利用できるようにする。

 ただ、「セキュリティー能力が低い海外サービスと連携すれば、そこから情報が不正流出する危険性も高い」(IT関係者)

 日銀や金融庁は法整備や規制の検討を進めるが、大和総研の長内智主任研究員は「規制やセキュリティーを強めると逆に利便性が損なわれ、現金決済の利用者が増えかねない」と分析する。利便性と安全性の両立確保は大きな課題だ。(西村利也)



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