ロシア下院議員のアンドレイ・グルレフ氏は、特別軍事作戦における「真実に基づいていない嘘の報告」に対して批判を行いました。この批判には複数のミルブロガーも共感し、「ロシア軍の嘘は戦術レベルから戦略レベルまで広がっており、大統領に報告される内容は恐ろしいものだ」と指摘しています。
嘘の報告で自身の首が締まり始めたロシア軍、不必要な損失が発生して無駄な失敗を繰り返す
アンドレイ・グルレフ議員は第58軍連合軍の司令官や南部軍管区の副司令官を歴任し、現在は国防委員会の委員を務めています。彼はロシア軍について、「特別軍事作戦における最大の問題は『真実に基づいてない嘘の報告』である」と批判しました。この発言には複数の軍事ブロガーも賛同し、注目を集めています。
出典:Kremlin.ru/CC BY 4.0
グルレフ議員は、「軍の中で蔓延する嘘との戦いは特別軍事作戦の開始直後から続いている」と述べています。例えば、ある大隊の指揮官は配備先の森林地帯を半年間も「我が支配している」と報告していましたが、新たに配備された部隊の指揮官が「支配しているはずの森林地域」に敵がいることを知り、報告書上ではロシア軍の支配地域だったはずの場所を攻撃しなければならない状況になりました。このような真実に基づいていない嘘の報告は日常茶飯事であり、大統領や国防相、参謀総長、国防省に対しても前線の指揮官たちは不正確な情報を報告していると指摘しています。
要するに、前線で戦うロシア軍部隊の指揮官たちは「不都合な事実」を上に報告せず、軍の上層部は「誤った戦場認識」に基づいて決断を下す傾向があるということです。グルレフ議員は、「嘘の報告が許されない行為であると認識した指揮官チームを結成し、国防相が彼らと会って目を見て話すことが重要だ。同時に、嘘を報告した者への罰則強化(懲役14年〜15年)も行わなければならない」と提案しています。この提案には43万人以上の読者を持つ軍事ブロガー(Два майора)も賛同し、「ロシア軍における嘘の文化が勝利の妨げになっている」と主張しています。
出典:Генеральний штаб ЗСУ
また、軍事ブロガー(Военкор Котенок)も「どのような形であれ、嘘によって勝利することはあり得ない。ソ連時代初期と比較すれば嘘は減ってきているものの、現在でも嘘は様々なレベルで存在し、不都合な事実を意図的に隠した報告が間違った決断を生む」と述べています。このブロガーは40万人以上の読者を持ち、「ロシア軍での嘘は戦術レベルや大隊レベル、さらには戦略レベルにまで及び、大統領や国防省が受け取る情報の内容は想像するだけでも恐ろしい」と指摘しています。
さらに、彼は「ある陸軍の司令部では反発や叱責を恐れて情報を隠し、そのため必要な支援や補給が前線部隊に届かず、不必要な損失が発生して無駄な失敗を繰り返している」と述べています。ロシア軍が試みたアウディーイウカ奪取やクラホヴェ方向への突破は人員と装備を失うだけで終わりましたが、ドンバスで敵が試みた反撃は成功を収めています。一番驚くべきことは、ドンバス方面でローテーションを行い、失った人員を補充する余裕が敵に残されていることです。ウクライナ軍の成功は、単にクラスター砲弾の使用に起因するものではないと述べています。
出典:Минобороны России
もしかすると、ロシア国防省の発表が事実とかけ離れているのは「意図的なプロパガンダ」ではなく、前線から届く「真実に基づいていない嘘の報告」が積み重なった結果なのかもしれません。
ちなみに、グルレフ議員は昨年10月のテレビ番組に出演した際にも、「我が軍には問題があり、正確な情報が共有されず嘘が蔓延している。このシステムは上から下に進むものではなく、下から上に進むべきだ」と批判しました。しかし、彼がこの発言をした直後にSkypeの通信が切断されたため、ロシア軍にとってこのような批判は「不都合な情報」として扱われているようです。
ウクライナ戦への批判が続出し、クレムリンと国民の関係がますます気まずくなっています。
※アイキャッチ画像の出典:Андрей Гуルレフ