参政党、参院選躍進の陰に潜む「問題発言」の波紋と支持層の深層:専門家が分析

いよいよ7月20日の投開票日が迫る参院選。今回、特に注目を集めているのが、情勢調査で10議席以上の獲得が予想され、勢いを増している参政党です。しかしその一方で、党代表の神谷宗幣氏(47)をはじめ、SNSや街頭演説での発言が度々問題視されるなど、物議を醸すケースも少なくありません。本稿では、参政党の政治資金パーティーにも足を運び、その動向をつぶさにウォッチしてきたライターの黒猫ドラネコ氏の見解を基に、参政党躍進の背景、問題発言の実態、そして支持層の心理を深掘りします。

参政党代表の神谷宗幣氏。同党の躍進と、その発言を巡る議論は続く。参政党代表の神谷宗幣氏。同党の躍進と、その発言を巡る議論は続く。

参政党躍進の背景:コロナ禍と支持層の拡大

黒猫氏が参政党に注目し始めたのは、2022年の参院選で同党が初めて議席を獲得する直前でした。新型コロナウイルスのパンデミック下で、「反ワクチン集団」が乱立する中、覇権を握る勢力を見極める中で、参政党に意識を向けたといいます。当時、事務局長だった神谷氏もコロナワクチンの予防効果を否定する発言を繰り返していましたが、他の反ワクチン勢力とは異なり、メディアでは「新しい政党」「議席獲得の可能性」「ワクチンに疑問を持つ支持者を集めている」といった論調で報じられ、否定的な見方はほとんどなかったと黒猫氏は振り返ります。

2022年7月の参院選で神谷氏が当選し国政政党となって以来、現在では5人の国会議員を擁し、地方でも140人以上の議員を輩出しています(2023年4月の統一地方選では100人が当選)。今回の参院選の前哨戦とも言われた6月の東京都議選でも初挑戦ながら3議席を獲得するなど、その躍進は続いています。黒猫氏によると、支持層拡大の背景には「投票する政党がない」と迷う人々が、「話題性がある」「自民党には入れたくない」「勢いがある」といった曖昧な理由で、内容を深く精査することなく参政党に投票するケースが多いと指摘します。さらに、彼らが熱心に取り組む「どぶ板選挙」(街頭での握手やチラシ配布など)による「新しい政党」というアピールが、「そこまで言うなら」と投票を促す要因になっているようです。

「日本人ファースト」が捉える民意:反グローバリズムの主張

今回の参院選で参政党が掲げるキャッチコピーは「日本人ファースト」。これには、過度な外国人の受け入れなど外国人政策の見直しや、「反グローバリズム」という方針が含まれています。黒猫氏によれば、参政党は一貫して反グローバリズムを主張してきたといいます。

彼らは「外資系企業が日本を席巻しようとしている。日本が貧しくなっているのはグローバリストの仕業」と主張します。これは単純に「外資系企業=悪」というより、「日本を支配しようとしている勢力がいる。日本を弱体化させようとしている」という文脈で語られており、インバウンド増加や外国人問題が社会の争点に浮上する中で、彼らの主張が人々の共感を呼んでいる側面があるようです。

相次ぐ問題発言と党の対応:メロンパン、パンデミック、皇位継承

参政党への注目度が高まるにつれて、党関係者の言動が連日のようにSNSやメディアで問題視されているのも事実です。最近では、政治団体「日本誠真会」代表の吉野敏明氏(57)が、参政党幹部だった際の街頭演説で「メロンパン1個食べて翌日死んだ人はたくさん見てます」と発言していたことが再び注目され、これに対する現党関係者の対処が波紋を広げました。

根拠不明の「メロンパン」発言が物議を醸す中、参政党の吉川りな衆院議員(38)は7月6日のXで「メロンパン、ちょっと古い」と批判を正面から受け止めず、今回の参院選に出馬している梅村みずほ氏(46)は10日の投稿で「『メロンパン食べたら死ぬ』は党の公式見解ではございません。国民の皆さまにおかれましてはデマの流布にご注意くださいませ」と呼びかけつつ、満面の笑みでメロンパンを持つ自撮り写真を投稿しました。

黒猫氏はこれについて、「連日批判を受けているのは、当初から適当なことや根拠のないことばかり言って、注目を浴びたことでそれが露見し始めただけ」と指摘します。また、批判に対抗する中で言葉が強くなっている面もあるとし、「彼らには打算的な部分もあり、『左が敵』『メディアが敵』という考えが根本にある。言い訳と同時に反撃することで、『参政党が攻撃されている』『向こうにとって都合が悪いから攻撃されている』と演出的に見せる手法を巧みに使っている印象がある。周囲が批判すればするほど、彼らは頑なになる」と分析します。

神谷氏自身も、自身の発言が各方面で取り上げられると、「切り取られた」などと訴えるケースが目立ちます。例えば、神谷氏は7月2日、日本記者クラブ主催の討論会でグローバリズムに関する見解を述べる中で、「彼ら(多国籍企業)は色んなことをやります。パンデミックを引き起こしたということも噂されています」と発言しました。この発言が根拠に欠けることからSNSで「デマ」として拡散されると、参政党は11日、公式HPで「『パンデミック』に関する発言の一部が切り取られ、意図とは異なる形で拡散されております」と訴え、「あくまで問題提起の文脈で述べたもの」と主張しました。

また、神谷氏は2023年に党の公式YouTubeチャンネルの動画で、安定的な皇位継承について持論を述べる流れで「ちょっと賛否両論あると思うんですけど、天皇陛下に側室を、やっぱり持っていただいて。たくさん子供を作っていただくと。昔はそうしていたわけですよね」と発言し、後に当該箇所を削除しました。この件について、本誌が党に取材を申し込んだ際も「ご回答できません。すみません」と答えるのみで、神谷氏が自ら謝罪や釈明を行うことはありませんでした。黒猫氏は、こうした神谷氏の姿勢は「性格だろう」とし、支持者にとっては「正しいか正しくないか」よりも、「世の中の景気が良くなく、自分たちが上手くいかない中で、それを打破するためには彼らが必要」という考えが第一義になってしまい、客観視ができていない状況があると見ています。

支持者の心理と今後の展望:専門家の懸念

参政党が複数の議席を獲得する見通しですが、このような「体質」が参院選後の党勢に影響することはあるのでしょうか。黒猫氏は「それは難しい質問」とした上で、次のように語ります。

「今回の選挙で何議席を獲得するかにもよりますし、衆院が解散した場合の議席獲得数にもよる。ただ、アメリカの状況などを見ていると、多数派になる可能性もゼロではありません。『おかしい』『間違っている』と突きつけられ、それが事実であったとしても、正しいとされてしまう危険性がある。分断が広がることを懸念しています。選挙で投票する際は、ぜひ良い面のアピールだけでなく、反対側の意見にも耳を傾けてほしいですね。」

参政党の躍進は、既存政党への不満や閉塞感を抱える有権者の受け皿となっている一方で、その言動を巡る論争は尽きません。有権者一人ひとりが、多様な情報を基に多角的に判断することが、民主主義の健全な発展には不可欠と言えるでしょう。


参考文献: