2023年1月14日、広島拘置所内で一人の死刑囚が食事中に食べ物を喉に詰まらせ、窒息死するという痛ましい出来事がありました。数日前にも同様の事故で救急搬送されていたこの人物こそ、「鳥取連続不審死事件」で世間の注目を集めた上田美由紀元死刑囚(享年49)です。彼女が最初に逮捕されたのは2009年11月2日。当時全国のトップニュースとして報じられたこの事件は、なぜこれほどまでに社会に衝撃を与えたのでしょうか。本稿では、上田元死刑囚の死を機に、彼女が関与したとされる一連の不審死事件とその背景について、当時の報道を基に振り返ります。
「鳥取連続不審死事件」と上田美由紀元死刑囚の逮捕
「鳥取連続不審死事件」は、上田美由紀元死刑囚の周辺で6人の男性が不可解な死を遂げていたことで知られています。当初、彼女は知人女性から126万円を騙し取った詐欺容疑で鳥取県警に逮捕されました。しかし、捜査が進むにつれて再逮捕が繰り返され、最終的に彼女が起訴されたのは、複数の詐欺、住居侵入・窃盗1件、そして強盗殺人2件(2人)という重大な容疑でした。残る4人の死については、自死2人、事故死1人、病死1人と判断されました。
この事件は裁判員裁判で死刑判決が下され、その後、最高裁でも上告が棄却され死刑が確定しました(死亡時は再審請求の準備中でした)。彼女の死によって、事件の全容が再び注目されることとなりましたが、一連の事件の異常性と複雑さは、当時の社会に大きな衝撃を与え続けていました。
Aさん変死、そして不審な繋がり
上田美由紀元死刑囚が詐欺容疑で逮捕される数日前、鳥取市内の自宅アパートでAさん(当時58歳)が変死しているのが発見されました。Aさんは上田元死刑囚と同じアパートの別棟に住む知人であり、2009年10月26日の夜に変調を訴え、翌朝救急搬送されたものの、すでに心肺停止状態だったと報じられています。
Aさんの遺体からは睡眠導入剤と風邪薬の成分が検出され、この成分が事件のキーポイントとなりました。なぜなら、10月上旬に市内の摩尼川で遺体で発見されたBさん(当時57歳)、そして4月に同県沖の日本海で水死したCさん(当時47歳)の遺体からも、同様の成分が検出されていたからです。
美由紀の行きつけだったコンビニエンスストアの従業員の証言によれば、上田元死刑囚とAさんは約1ヶ月前から一緒に店に来るようになり、上田元死刑囚の子どもたちはAさんのことを「じいじ」と呼んで懐いていたといいます。Aさんも「足(自動車)がないので乗せてもらって助かる。色々面倒見てもらっている」と嬉しそうに話していたとされ、両者の間には深い関係性があったことがうかがえます。このような背景から、Aさんの死はさらなる疑惑を深めることとなりました。
鳥取連続不審死事件で逮捕された上田美由紀元死刑囚
まとめ
上田美由紀元死刑囚の突然の死は、再び「鳥取連続不審死事件」の複雑で暗い影を社会に投げかけました。複数の男性が不可解な死を遂げ、その背景には上田元死刑囚の存在があったとされるこの事件は、詐欺から強盗殺人へと発展する異例の経過を辿りました。裁判員裁判による死刑判決は、この事件の重大性を示しています。彼女の死によって事件の真相が完全に解明されることはありませんが、今回の出来事が、過去の事件を振り返り、その教訓を学ぶ機会となることを願います。
参考文献
- 週刊新潮 2009年11月19日号 記事再編集





