秋田県で過去最悪のクマによる人身被害が続出し、鈴木健太知事が防衛省に自衛隊の派遣を要請しました。この深刻な状況を受け、クマ対策の緊急性が高まっています。しかし、自衛隊の出動が直ちにクマの駆除を意味するわけではありません。本記事では、秋田県のクマ被害の現状、知事の要請の背景、そして自衛隊による駆除がなぜ難しいのかを、法的・技術的側面から詳しく解説します。
秋田県のクマ被害が過去最悪に:知事、自衛隊派遣を要請
秋田県では今年10月、クマによる人身被害が26日時点で35人に上り、月別で過去最悪を記録しました。この深刻な事態を受け、鈴木健太知事は10月28日、防衛省の小泉進次郎防衛相に対し、自衛隊の派遣を要請する文書を提出しました。知事は「状況は県と市町村のみで対応できる範囲を超え、現場の疲弊も限界」と現状の厳しさを訴えました。元陸上自衛隊員である鈴木知事のこの要請は、クマ対策における異例の対応として注目を集めています。
秋田県で人身被害が過去最悪を記録したクマの姿
自衛隊によるクマ駆除は「法的に不可能」:知事が説明
鈴木知事の要請は、自衛隊が直接クマを駆除するためではないと、知事自身がSNSで明らかにしています。「自衛隊を出動させればよいとの意見もあるが、駆除のための武器使用は法的に不可能」と投稿。現行法では、「駆除そのものを目的とする武器使用は許されない」と強調しました。さらに、「銃や訓練の性質からもクマの駆除は難しい」とも記しており、自衛隊がクマを銃で駆除することの現実的な困難性を示唆しています。
小銃と猟銃の違い:専門家が語る駆除の限界
なぜ自衛隊によるクマ駆除が難しいのでしょうか。北海道猟友会・札幌支部「ヒグマ防除隊」の玉木康雄隊長は、「自衛隊員は銃器に慣れているが、装備する小銃と猟銃では使用目的も銃弾の威力も全く違う」と説明します。陸上自衛隊の主力である「89式5.56ミリ小銃」は対人用で、防弾チョッキへの貫通力はあるものの、クマのような大型動物に対して「致命傷を与えることはできません」と玉木隊長は指摘。クマを確実に仕留めるには、より強力な猟銃が必要であり、自衛隊の装備では不十分であるとの専門的な見解が示されました。
秋田県でのクマによる人身被害は深刻さを増し、自衛隊への支援要請という異例の事態に至りました。しかし、自衛隊の役割は直接的な駆除ではなく、広範な支援にあることが強調されています。法的制約と装備の特性から、自衛隊によるクマの直接駆除は困難であり、今後、この複雑な問題には、専門家と連携した多角的なアプローチが不可欠となるでしょう。




