元TBSアナウンサーのアンヌ遙香さん(40歳、旧名・小林悠)は、2016年の退社後、20年にわたる東京生活に区切りをつけ、2024年に故郷である北海道へと活動拠点を移しました。アラフォー世代として新たなスタートを切った彼女の連載では、シングルライフを送る「出戻り先」での日常や心境が綴られています。今回は、そんなアンヌさんがかつて深く傾倒していた「立ち飲み屋での一人飲み」から足が遠のいてしまった、ある社会的な理由について深く掘り下げます。
「おひとりさま」文化と立ち飲み屋の魅力:女性の一人飲みのリアル
女性の皆さんにとって、一人で飲食店に入ること、特に一人でお酒を楽しむことは、いまだにハードルが高いと感じる方も少なくないでしょう。「一人ランチさえ苦手」という声や、「カフェならともかく、一人でお酒を飲むなんて想像できない」という意見も耳にします。しかし、10代の頃から一人行動に慣れ親しみ、お酒をこよなく愛するアンヌさんにとって、一人でふらりと居酒屋やラーメン屋、イタリアンに立ち寄り、ビールやワインを注文するのはごく自然なことです。
そんなおひとりさまの楽しみ方を知るアンヌさんでも、少しばかり勇気が必要だったのが「立ち飲み屋」でした。カウンターに立ち、お酒を片手に店内のテレビを眺めたり、店主と気軽に言葉を交わしたり、常連客との交流を通じて仲間入りを果たす、といった自由な雰囲気が立ち飲み屋の醍醐味です。アンヌさんも一時期は様々な立ち飲み屋を巡り、ほろ酔い気分で帰路につくというサイクルに心惹かれていました。しかし、近年ではこの「一人立ち飲み」からすっかり遠ざかってしまったと言います。
北海道で活動拠点を移し、新たな生活を送る元TBSアナウンサー・アンヌ遙香さん
なぜ女性は「年齢」を尋ねるのか?初対面での失礼な質問にうんざり
その理由は、予想外なものでした。「初対面の人に年齢を聞かれすぎてもううんざりしてきた」から、とアンヌさんは明かします。さらに驚くべきは、その質問のほとんどが男性からではなく、同性である女性からだというのです。この現象は、いったい何を物語っているのでしょうか。
そもそも、人に年齢を尋ねる行為は、古くから失礼にあたるとされる社会的な常識です。お酒の席に限らず、宗教、政治、お金、あるいは性的指向といったデリケートな話題と同様に、「年齢」もまた、現代社会において人々が共有すべき社会マナーとして認識されています。それにもかかわらず、アンヌさんが一人で立ち飲み屋にいると、初対面の女性が興味津々といった様子で「おいくつなんですか?」と尋ねてくることが頻繁に起こるのだと言います。
アンヌさん自身も、その背景には自身の個性的な要素があることは理解しています。会社員ではないため普段から非常にラフな服装が多く、アメリカ人の父親を持つエキゾチックな顔立ちから年齢が判断しにくいこと。また、元アナウンサーとしての特性上、話し方には「昭和らしさ」や「ベテラン感」がにじみ出ていることも自覚しています。平日の夜に、そのような格好で一人で立ち飲み屋にいる女性がどのような人物なのか、周囲が興味を持つのはある程度想像がつくと述べます。しかし、だからといって、初対面でいきなり年齢を尋ねるという行為が、なぜこれほどまでに多くの女性の間で行われているのか、その謎は深まるばかりです。
結び:ソロ活における「無意識の侵害」と社会のマナー
アンヌ遙香さんの一人飲みの体験は、女性の一人行動に対する社会の視線と、そこに含まれる無意識のパーソナルスペース侵害を浮き彫りにします。気軽に楽しめるはずの立ち飲み屋という空間が、初対面での不躾な質問によって居心地の悪い場所へと変貌してしまう現実。これは、単なる個人の不快感に留まらず、多様なライフスタイルが尊重されるべき現代社会において、改めてコミュニケーションのマナーや他者への配慮を問い直すきっかけとなるでしょう。個人の自由な選択と公共空間での快適な共存のために、私たちは何に意識を向けるべきなのか、深く考える必要があります。




