今年10月に元総理大臣である村山富市氏を輩出した社会民主党が、今、大きな岐路に立たされています。副党首を務め、沖縄2区選出の衆議院議員である新垣邦男氏(69)が11月2日に会見を開き、社民党からの離党を正式に表明しました。新垣氏は、党首である福島みずほ参議院議員(69)に対し、衆議院への“くら替え”を含む党勢拡大に向けた複数の提案を行ってきましたが、それらが受け入れられず、現状では「一人で衆議院議員を務めることが厳しい」と感じたことが離党の主な理由だと説明しています。この一連の騒動は、党内に深刻な動揺をもたらしています。
新垣邦男衆院議員の離党表明と、受理されない離党届
新垣氏は、9月末には既に福島党首に対し離党届を提出していました。しかし、その場で「すぐに受け取れない」と受理を拒否されたといいます。その後、新垣氏は服部良一幹事長(75)にも離党届を提出しましたが、同様に受理されることはありませんでした。最終的に、新垣氏はやむを得ず離党届を党全国連合へ郵送したと会見で明かしました。しかし、この手続きを巡っても党側との認識の相違が浮上することになります。
社民党副党首・新垣邦男衆院議員が離党を表明し記者会見を行う様子
社民党執行部の反論と手続き上の問題
新垣議員の離党表明を受け、社民党の服部幹事長は11月4日に幹事長談話を公表しました。談話では、新垣氏が記者会見を行う前に党全国連合や沖縄県連合への事前の告知がなかったことに「極めて残念である」との不満を表明。さらに、新垣氏が郵送したとする離党届について「無効である」と明記し、手続き上の問題点を指摘しました。党の規約では、離党届はまず所属する沖縄県連合に提出され、その後、県連合から全国連合へ上申される手順が定められており、今回この手続きが踏まれていないと説明しています。社民党側は、手続きの不備を理由に離党を認めない姿勢を示しているのです。
また、談話では「党首が衆院選に出馬しないから離党すると言うのはあまりに飛躍であり、残念ながら新垣議員の真意が全く理解できない」とも記されており、新垣氏の離党理由そのものにも疑問を呈しています。党執行部としては、新垣氏の主張が党規約に反するとともに、離党の真意が不明瞭であるとの見解を示しており、両者の溝は深まるばかりです。
唯一の衆院議員失脚の危機と党の存続問題
新垣氏は社民党にとって唯一の衆議院議員であるため、彼の離党は党に計り知れない打撃となります。7月の参議院選挙では、タレントのラサール石井氏(70)の出馬もあり、比例代表の得票率が2%を超えたため、政党要件を失う事態は避けられました。しかし、衆議院議員がゼロとなれば、党としての顔が立たないばかりか、政党助成金が減額される恐れがあります。
近年の社民党の得票数から見ても、仮に福島党首が衆議院への“くら替え”出馬をしても、当選できるかどうかは不透明な状況です。そのため、「新垣氏が離党を望むあまり無理難題を突きつけ、これに対して社民党上層部が離党を引き延ばしている」と見る向きも少なくありません。この一連の騒動に対し、SNSやネットニュースのコメント欄では、「辞めたいのに辞めさせてくれない」と社民党を「ブラック企業」に例える冷ややかな声が多数寄せられています。「社民党の存在意義があるのか」「この際廃党で良いのでは」といった厳しい意見も見受けられ、社民党は現在、その「存在意義」そのものを問われる事態に直面しています。





