0歳児を7時間放置し傷害、親権者責任遺棄で夫婦を逮捕:名古屋・南区

愛知県警は10月29日、名古屋市南区で生後3ヶ月の乳幼児と1歳児の娘を約7時間にわたり自宅に置き去りにし、次女に大怪我を負わせたとして、保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)を逮捕しました。この事件は、ことし7月9日の未明に発生した夫婦喧嘩に関する通報をきっかけに発覚。捜査当局は、乳幼児が放置されただけでなく、頭部骨折の重傷を負っていたことや、日常的なネグレクト(虐待)がなかったかを含め、詳細な調査を進めています。

発覚の経緯と幼子への傷害

事件が明るみに出たのは、2025年7月9日未明、名古屋市南区のエリカ容疑者の自宅近隣からの「夫婦げんかしている」との110番通報でした。駆けつけた警察官が自宅内で体調が優れない様子の0歳児を発見し、病院へ搬送。その後の調査で、容疑者夫妻が7月8日午後4時50分頃から約7時間もの間、生後3ヶ月の乳幼児と1歳児の娘を置き去りにして買い物や飲食店へ出かけ、飲酒していたことが明らかになりました。両容疑者は内縁関係にあり、いずれの子も実子とみられています。

県警によれば、両容疑者の認否はまだ明らかにされていないものの、事件には暴力が絡んでいた可能性も指摘されています。捜査関係者によると、通報を受けて警察官がエリカ容疑者の自宅を訪れた際、次女の顔には複数のアザが見られ、さらに頭部を骨折する大怪我を負っていたとのこと。これに対し両容疑者は、「床に落としてしまった」と供述しているとされています。幸い、子どもはその後保護され命に別状はありませんでしたが、県警は今回の事件が単発的なものか、それとも日常的なネグレクトや虐待の一環であったのか、引き続き慎重に捜査を進めています。

保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)ら夫妻が逮捕された様子保護者責任遺棄の疑いで北島遥生容疑者(23)と内縁の妻・エリカ容疑者(22)ら夫妻が逮捕された様子

容疑者夫妻の背景と近隣住民の証言

事件現場となったのは、JR名古屋駅から車で約20分の距離にある閑静な住宅街の一角、総戸数662軒の市営住宅です。エリカ容疑者は幼い頃からこの市営住宅で母親と同居しており、夫の遥生容疑者は別居状態とみられていますが、頻繁にこの家を訪れていたようです。近隣に住む40代女性は、遥生容疑者を「去年からよく見かけるようになった。背が高く、首のギザギザ模様のタトゥーが目立っていたため、見た目が怖く避ける人も多かった」と証言しています。彼がほぼ毎週のように訪れていたことから、「入り浸りだったのではないか」との見方を示しています。

エリカ容疑者の家庭環境についても、以前から懸念の声が上がっていました。近隣住民は、時折部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえていたと証言し、通報があった7月上旬の夜中には、絶叫するような子どもの泣き声とともに、男性の「お前のせいだろ!」といった怒号も耳にしたと語っています。「もしかしたら、あのときに手を出していたのかもしれない」と不安を募らせます。エリカ容疑者の母親は若い夫婦の子育てを手伝っていたようですが、遥生容疑者が来ると家を空けることもあったといい、通報があった日には部屋に大人が誰もいなかった可能性も指摘されています。生後3ヶ月の乳幼児が3時間おきの授乳が必要とされる中、7時間もの間放置された事実に、住民からは「信じられない」との声が聞かれました。

逮捕までの経緯と家庭環境の不安定さ

通報から逮捕に至るまでには約4ヶ月の期間が経過しました。この間、遥生容疑者は事件が警察沙汰になったことをきっかけに、市営住宅から約3キロ離れた別の場所に賃貸物件を借りたようです。物件の持ち主は、「9月に男性名義で部屋を借りたばかりで、特にトラブルは聞いていないが、フリーレント(一定期間家賃無料)だったので資金繰りに困っていたのかもしれない」と話しています。

また、県警には過去に、容疑者夫妻の口論などに関する相談が2回寄せられていたことが明らかになっています。このことは、容疑者らの家庭環境が以前から慢性的に不安定であった可能性を示唆しています。親子4人で新たな生活を始めようとしていたのか、それとも背景に夫婦関係の深刻な悪化があったのか、今後の捜査の進展が待たれます。事件の全容解明と、このような悲劇が二度と繰り返されないための対策が強く求められています。

参考文献