「管理職は罰ゲーム」と揶揄されるなど管理職昇進を忌避する風潮もあるなか、注目されているのが社内公募制度による「手挙げ昇進」だ。背景と効果、課題を探った。
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「私の中では『昇進した』というよりも、新しいポジションに『挑戦した』という感覚のほうが強いです。自分で決断した選択だからこそ、納得感と覚悟を持って主体的に業務を進められていると思っています」
こう打ち明けるのは、医療機器メーカー「テルモ」(東京都渋谷区)で「手挙げ昇進」した30代女性だ。
同社は医療界のパラダイムシフトに対応し、企業の成長を促進するため、課長職のポストを原則公募でのみ登用する新人事制度を2022年度に導入した。それまで上級職(課長職以上の管理職)に就くのに必須だった社内統一の昇進試験を廃止。社内公募に応じる形の「手挙げ昇進」に切り替えたのだ。主眼は社員のキャリア自律だ。
「会社が一方的に社員のキャリアを決める『会社任せのキャリア』ではなく、社員が主体的にキャリアを考え、自らの意思と能力でキャリアアップの機会に挑戦していく形への移行です」
こう話すのは、同社人事部人事企画チーム主任の松本幸大さんだ。
なぜ課長ポストなのか。その意図について松本さんはこう説明する。
「上級職への最初のステップとなる課長職を社内公募にすれば、『ポストは自分の手でつかみ取るもの』という意識を社内に定着させられる効果が大きいと考えました」
人事異動は「内示」と呼ばれ、完全に受け身という意識が根強い。それが社内公募による「手挙げ」が前提になれば、自分のキャリアに対して必然的に受け身ではいられなくなるというわけだ。
公募制度導入のコンセプトの一つが、「適所適材」の概念だ。
「その人の能力の範囲内でその人の仕事が定義される『適材適所』ではなく、事業戦略に基づき『仕事』が定義され、年齢や勤続年数にかかわらず、そのポストに最もふさわしい社員を登用していくのが『適所適材』です」(松本さん)
実際、どのように運営されているのか。






