2022年4月、北海道知床半島沖で発生した観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故は、乗員・乗客26名が死亡または行方不明となる未曽有の大惨事となりました。この事故に関し、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(62)に対する業務上過失致死罪での初公判が、2025年11月12日に釧路地方裁判所で開かれることになります。事故発生から3年半の時を経て、ようやく法廷でその責任の所在が問われることになり、社会的な注目が集まっています。
悪天候下の出港と沈没の原因
事故は2022年4月23日、悪天候が予想されるにもかかわらずKAZU Iが出港した後に発生しました。運輸安全委員会は、一昨年に発表した調査報告書の中で、船体のハッチに不具合があり、悪天候によって蓋が開いて浸水したことが沈没の直接的な原因であると指摘しています。この報告は、運航会社の安全管理体制の不ずさんさを浮き彫りにするものでした。
桂田社長の逮捕と起訴内容
事故の責任を追及する動きは続き、第一管区海上保安本部は昨年9月、桂田社長を逮捕。その後、釧路地方検察庁は10月に業務上過失致死罪で桂田社長を起訴しました。起訴状によると、桂田被告は悪天候が予見され、事故が発生する恐れがあったにもかかわらず、船長に対し運航の中止などの指示を怠り、その結果として26名の死傷者を出したとされています。運航管理者としての責任を果たす義務を怠ったことが、最大の争点となる見込みです。
初公判を控える知床遊覧船の桂田精一社長の姿
「責任転嫁」と「遺族軽視」の姿勢
事故後、桂田社長は世間から「責任転嫁」の見本のような人物であると非難されてきました。昨年秋の逮捕直前、「週刊新潮」が報じた彼の日常生活や発言からは、その悪評が裏付けられています。桂田社長は運航管理者としての責任は認めつつも、「海が荒れたら船長の判断で引き返すと思っていた」と主張し、さらに事故3日前の国の検査で何も指摘されなかったことを理由に、国にも責任があるかのような態度を取っていたとされています。
また、遺族との向き合い方に関しても批判の声が上がっています。事故発生の4日後に開かれた「土下座会見」以降、桂田社長は公の場に姿を見せることなく、2023年4月、2024年4月に開催された追悼式にも「呼ばれていないので行けない」と欠席。こうした姿勢は、遺族の悲しみや憤りを増幅させるものでした。事件後も知床の斜里町で生活を続けていた桂田被告の、事故に対する真摯な反省が見られないとの指摘も少なくありません。
今回の初公判は、桂田被告の運航管理者としての過失の有無、そして事故に至るまでの判断と行動の適否が厳しく問われる場となります。犠牲者と遺族の無念を晴らし、同様の事故の再発防止につながる公正な判断が下されることが期待されています。
参考文献
- Yahoo!ニュース: 知床観光船事故、桂田社長の初公判迫る 業務上過失致死罪で逮捕・起訴 26人死亡・行方不明の責任の所在は
https://news.yahoo.co.jp/articles/7545d2a226ce64021e6d66569d72e2f2fe82619d - デイリー新潮: 「知床遊覧船」事故、強欲社長が「逮捕されない」可能性 元船長が明かす “重大な過失” (2022年5月10日掲載記事、本記事中では2024年10月3日号の再録として引用)




