YouTubeのお悩み相談番組『大愚和尚の一問一答』は登録者数75万人を超える。そこに寄せられる悩みのトップはずばり「お金」。和尚の著書『お金と宗教の歴史』は歴史・宗教史の本でありながら、「お金」の悩みを手放すヒントが書かれている。お金に対する仏教のユニークなスタンスを語る。
■誰もが心を寄せる世界宗教「お母さん教」
「宗教とは何か」に対する答えはさまざまですが、ひとつには「自分の心のよりどころ」と定義することができます。仏教でも、キリスト教でも、イスラム教でもそれは同じです。そして誰もが心のよりどころにしたことのある「世界的な宗教」があります。
それは「お母さん教」です。
小さいうちは、みなお母さん教ですよね。お母さんが心のよりどころだからです。私も長い間、お寺にある幼稚園の園長を務めているのでわかります。子どもたちはパパそっちのけで、「ママ! ママ!」と言っています。
そしてこのお母さん教と同じくらい強力になってきているのが、「お金教」です。人々はお母さん教を卒業し、お金教に入信していくわけです。
お金教とは何か。それは、お金がないと不安になり、お金に安心を求めるものです。先のお母さん教は、ママがいないと不安になり、ママがいると元気になり、勇気が湧いてくる。心理的安全性を、母親に求めているわけです。その心理的安全性がお金に変わったのが、世界中を席巻しているお金教です。
これを読んでいるあなたもお金教に入信しているはずです。「いやいや、そんなことありません」とおっしゃるかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。
「今、お母さんがそばにいなくても大丈夫ですか?」
そう聞くと、大人はたいてい「大丈夫」と答えるはずです。
■「お金を語れない」は僧侶として失格
では、次の質問はどうでしょう。
「今、お金がなくても大丈夫ですか?」
この質問に「大丈夫」と答えられる大人はほとんどいないはずです。自分の預金通帳を見て、数字が増えれば安心し、減ったら不安になる。心理的安全性をお金に求めているからです。






