NHK朝ドラ「ばけばけ」では、板垣李光人さんが雨清水三之丞という人物を演じている。歴史評論家の香原斗志さんは「モデルとなったのは、小泉セツの実弟・藤三郎だ。実家が零落した後は、セツからの送金を頼りに暮らしていた」という――。
■小泉セツの弟の転落はドラマよりもずっとひどかった
NHK連続テレビ小説「ばけばけ」の第6週「ドコ、モ、ジゴク」(11月2日〜7日放送)には、かなり衝撃的な場面が2つあった。1つは、トキ(髙石あかり)が松江の街を歩いていて、実母の雨清水タエ(北川景子)が路上に正座し、物乞いをしているのを見てしまったことである。衝撃が大きすぎて、トキはそれを家族にも話せなかった。
もう1つは、タエの三男の三之丞(板垣李光人)、すなわちトキの実弟の姿だった。トキの養父の松野司之介(岡部たかし)が働く牛乳屋に現れた三之丞は、働かせてほしいと頼んだが、驚いたことに、人に使われるのはダメで、人を使う仕事でないとできないという。三之丞は「お願いです、社長にしてください」と何度もすがるが、牛乳屋の社長の原田(滝本圭)は激怒し、「二度と来るな! ええな!」と怒鳴りつけ、追い返した。
まもなくトキは三之丞とばったり会い、翌日、雨清水家に起きたことを聞き出した。トキの実父でもある傳(堤真一)の死後、タエと三之丞は親戚筋に身を寄せるしかなく、少しでも稼ぐために三之丞も働いたという。だが、タエからは「雨清水家の人間なら、人に使われるのではなく人を使う人間になりなさい」といわれてしまったそうだ。
結局、親戚にも頼れなくなって松江に戻り、タエは潔く物乞いとなり、三ノ丞は人を使う仕事を探して、見つからずにいるのだという。
三ノ丞やタエのモデルが実際に陥った境遇を、ドラマではかなり大げさにして描いているのではないか、と勘繰りたくなるほど衝撃的な場面だったが、じつは、モデルが陥った境遇は、ドラマで描かれたよりもっとひどいものだった。






