クマと人間、戦時下の日本:史上最悪の被害に政府が緊急対策

日本各地でクマによる人身被害が過去最悪の水準に達し、人間とクマの関係は「戦争状態」と表現しても過言ではない状況を迎えています。死者数は記録を更新し、政府は緊急の閣僚会議を開催するなど、対策への本気度をアピールしていますが、その裏では現場での人間同士の軋轢も見え隠れしており、事態の先行きには不透明感が漂います。

高市政権は、国民の生命と財産を守り抜くために、警察や自衛隊の動員すら視野に入れ、「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」を日本で初めて発足させました。先月30日、首相官邸で開かれた初会合には、8省庁の大臣や副大臣が一堂に会し、実質的なトップである木原稔官房長官(56)が議長を務めました。木原官房長官は「死者数は本日までに12名となり、国民の安全・安心を脅かす深刻な事態です」と述べ、この問題の深刻さを強調しました。会議のわずか4日後、秋田県湯沢市の山林で、行方不明になっていた後藤キヨさん(79)の遺体が発見され、体にかまれたような痕があったことから、警察はクマに襲われた可能性が高いと見ています。

これにより、今年度のクマによる全国の死者数は13名となり、これまでの最多記録であった2023年度の6名を大きく上回る、過去最悪の数字を更新する事態となりました。負傷者数も今年度は9月時点で100名を超え、一昨年の人身被害者数を上回る勢いで増加しており、事態の深刻さは増すばかりです。

現場は疲弊、「ガバメントハンター」と自衛隊派遣の可能性

木原官房長官は、閣僚会議の冒頭で危機感を露わにし、各省庁に緊急対策を講じるよう命じました。今月中旬までに「クマ被害対策施策パッケージ」を取りまとめる方針ですが、具体的な内容はまだ明らかにされていません。しかし、先の社会部デスクによると、木原官房長官はまず、狩猟免許を持つ自治体職員を「ガバメントハンター」として確保することを指示。さらに、警察庁に対しては、警官がライフル銃を使用してクマの駆除にあたれるかどうかの検討を指示しています。

会議に出席した小泉進次郎防衛相(44)は、全国で岩手県に次いで被害者の多い秋田県からの要請に応じ、「自衛隊派遣」を早々に実行に移しました。各省庁を挙げた総力戦の構えを見せていますが、果たして史上最悪のクマ被害を食い止めることができるのか、その効果が注目されています。

そもそも、クマの駆除現場は、絶対的な人手不足という深刻な問題に直面しています。特に秋田県では、自治体職員の疲弊が限界に達しているのが現状です。秋田市農地森林整備課の担当者は、「市役所には1日100件以上の目撃情報が寄せられます。即座に出向き捕獲作業を続けているので、現場の疲労はひどいものです」と現状を語っています。さらに、「市職員の勤務時間は平日8時半から17時15分までとなっていますが、私の場合はクマの対応に追われて毎日21時から22時までは帰れません。朝早くから目撃情報の電話が鳴り続け、夜遅くまで現場に向かうので、土日出勤も日常茶飯事です」と、過酷な労働実態を明かしました。

クマが発見され、いざ捕獲となれば地元のハンターの出番となりますが、熟練したハンターを集めることは容易ではありません。環境省の統計によれば、猟銃を扱える狩猟免許所持者は全国に約21万人いますが、実際に狩猟を行うために各都道府県に「狩猟者登録」をしている人の数は約14万人にとどまっています。その大半が60歳以上の高齢者であり、マンパワーの不足は深刻な問題として浮上しています。この人手不足が、効果的なクマ対策を阻む大きな要因の一つとなっているのです。

山道で鋭い視線で人を見つめるツキノワグマの様子山道で鋭い視線で人を見つめるツキノワグマの様子

現在の対策が遅々として進まない中、クマによる人身被害は増加の一途をたどり、地方自治体の職員やベテランハンターの負担は増大する一方です。政府が「総力戦」と位置づける対策は、現場の疲弊と人手不足という根深い問題をどう克服し、国民の安全を確保していくのか。その具体的な成果が待たれます。

Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/7a4b760fb5aa9a0ce4284796005e811433d5d515