日本に原子力潜水艦は必要か──。小泉進次郎・防衛相は11月6日、TBSの番組に出演し、潜水艦の動力に関して「今までのようにディーゼルか、それとも原子力かを議論していかなければいけないくらい、日本を取り巻く環境は厳しくなっている」と述べた。(註)そもそも小泉防衛相は10月22日にも「あらゆる選択肢を排除しない」と発言している。(全2回の第1回)
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発端は自民党と日本維新の会が結んだ政策合意書だった。合意書には《長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有に係る政策を推進する》と書かれていたのだ。
軍事ジャーナリストは「引用した部分に『原子力潜水艦』の文字は記されていませんが、軍事の専門家なら誰でも原潜について言及していると分かります」と言う。
「アメリカ海軍が持つ最新型の原潜は30年以上、核燃料を交換する必要がありません。艦内に原子炉を積んでいるため発電量は桁違いで、豊富な電力を使って海水から真水や酸素を簡単に作ってしまいます。つまり原潜は乗組員の食糧がなくなるなど、人間の限界点まで海中での航行が可能です。一方、海上自衛隊が運用しているのは国産のディーゼル潜水艦です。ディーゼルエンジンは燃料を燃やすために空気が必要ですから、原潜ほど長くは潜れません。政策合意書にある『長期間の移動や潜行を可能とする次世代の動力』が原子炉を指しているのは明白だと言えます」
さらに注目すべきは「VLS」だ。英語の「Vertical Launch System」の略語であり、日本語では「垂直発射システム」と訳される。
VLSを搭載できないディーゼル潜水艦
「潜水艦の艦首には今も昔も魚雷発射管が備え付けられています。発射された魚雷は前に進み、その方向は艦と“並行”です。ところが第二次大戦後に研究開発が進み、軍艦の甲板から“垂直”にロケットを発射する技術が完成しました。1960年代には水中でロケットを発射させることにも成功したため、原潜は核弾頭を搭載したミサイルを海中から空に向かって垂直方向に撃つことが可能となったのです。一方、海上自衛隊が保有する最新型の潜水艦は2022年から就役を開始した『たいげい型』ですが、VLSを搭載できるスペースはないと言われています。ディーゼル潜水艦は原子炉ほど大量の電力を生み出せないので、艦のサイズが小さくなってしまうのです」(同・軍事ジャーナリスト)
政策合意書に「VLS搭載潜水艦」と明記されただけで、事実上、「イコール原潜」を意味するわけだ。さらに小泉防衛相はTBSの番組で「まわりの国々は皆、原潜を持つ」とも発言している。
「まず中国海軍は1974年、攻撃型原潜『長征1号』を就役させました。アジアの海軍で初めて原潜を運用した国が中国です。最新型は『096型原子力潜水艦』で、中国は急ピッチで建造を進めています」(同・軍事ジャーナリスト)






