正反対な性格でありながら、同じ苗字を持つ男女二人の15年間にわたる出会いから別れまでを描いた映画「佐藤さんと佐藤さん」が、11月28日より公開されます。岸井ゆきのと宮沢氷魚がW主演を務める本作は、一見するとありふれたラブストーリーのようですが、大事件が一切起きないにもかかわらず、観る者の心に深く響くリアルで濃密な人間ドラマとして注目を集めています。22歳から37歳までのカップルの道のりを淡々と追いながらも、さまざまな感情を呼び起こし、目が離せない珠玉のヒューマンストーリーが展開されます。
映画「佐藤さんと佐藤さん」メインビジュアル
岸井ゆきの＆宮沢氷魚が紡ぐ、正反対な二人の15年間
映画の主軸となるのは、佐藤サチ（岸井ゆきの）と佐藤タモツ（宮沢氷魚）という同姓カップルの15年間です。サチは明るく活発なダンス好きのアウトドア派、一方のタモツは物静かで正義感が強く真面目なインドア派と、性格はまさに正反対。しかし、大学の「珈琲研究会」で出会った22歳の二人は互いに惹かれ合い、同棲を始めます。
佐藤サチ役の岸井ゆきのと佐藤タモツ役の宮沢氷魚
5年後の27歳、タモツは塾講師のアルバイトをしながら独学で弁護士を目指しますが、司法試験に失敗。その孤独な挑戦に寄り添いたいと願うサチは、会社員として働きながら自身も司法試験に挑むことを提案します。二人は仲睦まじく二人三脚で切磋琢磨し、絆を深めていきます。
それから3年後の30歳、皮肉にも先に司法試験に合格したのはサチでした。間もなくしてサチの妊娠が発覚し、二人は結婚。子どもも無事に誕生し、幸福に包まれるかと思われましたが、タモツが交通事故で司法試験を受けられなくなるという悲運に見舞われるなど、喜びと悲しみを共に経験していきます。
サチは産後すぐに弁護士として多忙な日々を送る一方、タモツは試験勉強を続けながら家事、育児、アルバイトに追われるようになります。次第に二人の間に衝突が増え、「結婚しても佐藤、離婚しても佐藤」と笑い合って婚姻届を提出し、結婚後も何も変わらないと思っていた二人の関係性や心境には、確実な変化が生じ、すれ違いや距離が生まれていく様子が描かれます。
「花束みたいな恋をした」との比較から見出す、本作の独自性
一組のカップルの数年間の日常を丹念に積み重ね、そのリアルさが観客の胸を締め付ける感覚は、2021年に大ヒットした「花束みたいな恋をした」を彷彿とさせるところがあります。しかし、「花束みたいな恋をした」が大学生からの恋人時代5年間を描いたのに対し、本作「佐藤さんと佐藤さん」は、その約3倍にあたる15年という長い期間を綴っています。
若い頃や恋人時代のきらめくような時期だけでなく、恋人から夫婦へ、そして子どもの誕生や親族との交流を経て家族となっていく過程が、より一層リアルで切実に描かれているのが本作の大きな特徴です。本作は、結婚生活の喜びと苦悩、そして時と共に変化していく関係性の深層に迫ることで、観る者に深い共感と考察を促します。
結論
映画「佐藤さんと佐藤さん」は、ごく普通のカップルが経験するであろう喜び、葛藤、そして変化を、岸井ゆきのと宮沢氷魚の繊細な演技を通してリアルに描き出しています。15年という歳月の中で、関係性がどのように成熟し、時にはすれ違うのか。日常の中に潜む普遍的な愛の形、そして人間関係の機微を映し出す本作は、多くの観客の心に強く訴えかけることでしょう。ぜひ劇場で、この珠玉のヒューマンストーリーをご体験ください。
