日中関係の悪化が日本の観光業界に深刻な打撃を与えている中、ある情報番組が実施した街頭インタビューが「誤訳」の疑いで大きな波紋を呼んでいます。この問題は、メディアの報道姿勢と国際的な政治的緊張下における情報伝達の正確性について、改めて議論を巻き起こしています。日本の観光業が正念場を迎える中で、報道のあり方が問われる事態となっています。
日中関係緊迫化の背景と観光業界への影響
日中間の緊張は、高市早苗首相が11月7日の衆議院予算委員会で「台湾有事」について「存立危機事態になりうる」と発言し、武力行使に踏み切る可能性を示唆したことをきっかけに一層高まりました。これに対し、中国政府は猛反発し、日本産水産物の事実上の輸入停止に続き、14日には中国国民に対する訪日自粛を呼びかけるまでに至りました。
こうした状況は、長らくインバウンド需要の主要な牽引役であった中国人観光客に依存してきた日本の観光業界に壊滅的な影響を与えています。旅行のキャンセルが相次ぎ、宿泊施設や観光地は大きな打撃を受けており、経済的な苦境に直面しています。
「ミヤネ屋」街頭インタビューの内容と“誤訳”の指摘
11月17日に放送された情報番組『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、日中関係悪化の影響が広がる中、京都の嵐山を訪れていた中国人観光客への街頭インタビューを敢行しました。リポーターが中国人夫婦に対し、中国政府からの渡航自粛勧告が出ている中で来日した理由を問うと、夫婦は「早くから計画していた」としつつ「政治問題への発言はしません」と回答しました。
情報番組『情報ライブ ミヤネ屋』の司会を務める宮根誠司氏
波紋を呼んだのは、次に声をかけられた中国人男性へのインタビューでした。リポーターが習近平氏の訪日自粛呼びかけについて質問すると、男性はにこやかな表情から一転、首を振りながら「不知道 不知道」と答え、英語で「ソーリー、ソーリー」と謝罪し、その場を離れました。番組の字幕では、この「不知道」が「言えない 言えない」と訳されて放送されました。同様に、上海出身の中国人女性も「習近平」という言葉を聞いた途端、表情を硬くし、取材を拒否する様子が放送されました。
ネット上で巻き起こる批判と番組制作への疑問
この放送後、男性が「不知道」と答えるシーンを切り取った映像がX(旧Twitter)に投稿されると、コミュニティノート機能により「不知道」の正しい日本語訳は「言えない」ではなく「知らない」であるという指摘が寄せられ、瞬く間に拡散しました。
中国語教師からは、「『不知道』は字のごとく『知らない』または『わからない』と訳すのが一般的で、複数の翻訳アプリや辞書でも『言えない』とは出てこない」との解説がなされました。教師は、「中国では、多くの日本人が思っているよりも自由があるが、政治の話を人前で口にしないのは常識。政治の話題になった瞬間にインタビューを打ち切っていることからも、人前で言いたくないのは明らかだ」と述べ、「ミヤネ屋」が習近平氏の影響力を強調したかったのかもしれないが、「言えない」と訳すのはミスリードと指摘されても仕方がないとコメントしています。
X上では、「ちょっと意訳がすぎる」「明らかなミスリード」「意図的な“誤訳”を疑う」といった声が多数上がり、番組制作の意図について疑問が呈されました。また、政治的インタビューだと知らずに回答していた可能性を指摘し、インタビュー対象者の顔にモザイクをかけるなど、プライバシーへの配慮が不足していたのではないかという批判も上がっています。
読売テレビに対し、この「不知道」を「言えない」と訳した理由、批判への見解、モザイク処理などの配慮をしなかった理由について問い合わせましたが、「個別の番組の制作過程等についてはお答えしておりません」との回答に留まりました。
結論
今回の「ミヤネ屋」の街頭インタビューにおける“誤訳”疑惑は、日中関係のデリケートな状況下での報道において、メディアの正確性と倫理が改めて問われる事例となりました。特に政治的な発言の翻訳においては、言葉の持つニュアンスや文化的背景を深く理解し、意図的なミスリードを招かないよう細心の注意を払う必要があることを示唆しています。また、公衆の面前でのインタビューにおいては、対象者のプライバシー保護や状況への配慮も不可欠であり、今回の騒動は今後の報道番組制作における重要な教訓となるでしょう。





