今年3月1日に施行された改正銃刀法により、「ハーフライフル銃」の所持許可が厳格化され、日本全国でクマの駆除活動に従事する新人ハンターたちが危機に直面しています。この変更は、特に経験の浅いハンターにとって不可欠とされる猟銃のアクセスを制限し、人里でのクマ出没が増加する中で、その影響が懸念されています。
ハーフライフル銃とは?改正銃刀法の背景
狩猟関係者によると、ハーフライフル銃はクマの駆除に不可欠な猟銃であり、特に経験の浅いハンターほど持つべき銃だと指摘されています。しかし、この規制強化の背景には、2023年5月に長野県中野市で発生した4人殺害事件があります。この事件で犯人がハーフライフル銃を使用したことを重く見た警察庁は、2024年の通常国会に改正銃刀法の法案を提出。これにより、散弾銃を10年間保有した者のみがハーフライフル銃を保有できるという新規定が設けられました。改正前は散弾銃と同じ扱いだったため、新人ハンターでも所持が可能でしたが、現在は散弾銃しか保有できません。
警戒するクマ
厳格化された所持許可と新人ハンターへの影響
散弾銃の有効射程距離が約50メートルであるのに対し、ハーフライフル銃は約150メートルと、その射程距離に大きな差があります。北海道猟友会は「50メートルの距離からヒグマを狙うのは危険だ」と強く反論しており、この指摘はツキノワグマにも当てはまります。経験の浅いハンターほど安全な距離からクマを狙うためのハーフライフル銃が必要であるにもかかわらず、改正銃刀法によって「10年間所持できない」と定められたことは大きな問題となっています。
北海道の特例措置と他地域への課題
北海道猟友会の切実な訴えは、最終的に国を動かし、特例措置が認められました。警察庁は、「ヒグマやエゾシカの駆除に従事する者」に加え、「都道府県が被害防止に必要だと通知し、ハンターが通知が出た都道府県で狩猟を行うと申告する」場合は、新人ハンターでもハーフライフル銃を所持できると特例措置を拡大したのです。これにより、北海道の狩猟関係者は安堵しましたが、この特例が他の都府県に広がっていないことが懸念されています。
クマの被害に悩まされている東北地方などでは、「北海道とは違い、銃でクマを駆逐できるハンターが昔から少ない」「基本的には罠が主体」という歴史的背景があります。そのため、各地の猟友会に意見を求めても、「銃を使うことがないし、後継者不足で新人ハンターもいないため、改正銃刀法が施行されても影響は少ない」という回答が大半を占めました。しかし、人里へのクマ出没が増加傾向にある現在、この問題は看過できるものではありません。
クマ駆除の将来とハンター育成の重要性
今回の改正銃刀法は、新人ハンターが危険なクマ駆除の現場でよりリスクの高い状況に置かれる可能性を高めています。北海道の特例が示すように、地域の実情に応じた柔軟な対応が求められる一方で、全国的な課題として、地元に密着したハンターの地道な育成が不可欠であると専門家は指摘しています。持続可能なクマ対策と地域住民の安全確保のためには、法改正の影響を最小限に抑え、必要な技能と装備を持ったハンターを確保する仕組みが急務と言えるでしょう。





