監禁・暴行事件公判:「歪んだ正義感」が暴走した経緯

取引先の男性を3ヵ月間にわたり監禁し、暴行を加えたとして強盗、逮捕監禁致傷の罪に問われた大城優斗被告(24=逮捕時)と共犯の大城海人被告(25=同)の公判が、11月27日に東京地裁で開かれました。この日の被告人質問では、両被告が反省の言葉を述べる一方で、彼らの「歪んだ正義感」がいかにして暴走し、凄惨な事件へと発展していったのかが明らかになりました。

事件の概要と監禁の実態

事件は今年1月に発生しました。優斗被告は海人被告ら複数の友人と共謀し、トラブルになっていた男性の自宅を訪問。男性に暴行を加え、バリカンで丸刈りにした上で現金約85万円、商品券、高級腕時計9本など合計320万円相当を強奪しました。その後、男性を車に乗せて近郊の宿泊施設へと拉致。4月末までの約3ヵ月間、十数ヵ所を転々としながら監禁を続け、熱したフライパンを押し付けたり、熱湯をかけたりするなど、凄惨な暴行を加えていたとされています。この暴行により、男性の全身の10%に表皮だけでなく真皮まで及ぶ2度の熱傷を負わせるなど、重篤な傷害を与えました。

被害者に残された癒えぬ傷

大城優斗被告らは被害男性に対し1470万円の示談金を支払いましたが、男性には右目のぼやけといった後遺症が残り、何よりも事件による心の傷は深く癒えることがないと報じられています。優斗被告は被告人質問で、「ひどい暴行を加えて、終わりのない恐怖は怖かったと思います。やってしまったことは元に戻せないけど反省しています」と述べ、自身の行為への後悔を示しました。

監禁・暴行事件の裁判をイメージした画像監禁・暴行事件の裁判をイメージした画像

「正当な対価」を求める歪んだ計画

この事件の発端は、建設会社代表である優斗被告が手掛けたクロス張りの施工費用未払いトラブルでした。被害男性の上司A氏が施工の不備を指摘し、70万円の支払いを拒否したことがきっかけです。優斗被告は「正しい対価が得られないのはおかしいと思った」と海人被告らに相談し、費用の回収を計画しました。対応した被害男性との話し合いの中で、「ずっと抑えていた怒りが抑えきれなくなった」と男性に暴行を加えるに至り、結果的に70万円を回収することに成功しました。

しかし、事態はそこで終わりませんでした。優斗被告はA氏の会社が自身と同じように「詐欺被害」(編集部注:優斗被告の発言より)を受けたとされる建設会社の存在を知り、「他の被害者に対しても(男性に)正当な対価を払わせたいと思った」という理由で、男性の監禁生活をスタートさせたと供述しています。当初の金銭トラブルが、他者の「救済」という名目のもとに、さらなる監禁と暴行という歪んだ復讐へとエスカレートしていった経緯が明らかになりました。

歪んだ正義感の危険性

今回の公判で浮き彫りになったのは、個人が抱く「正義感」が一度暴走し始めると、いかに危険で、取り返しのつかない結果を招くかという現実です。費用の未払いというトラブルが、監禁や暴行、強盗といった重罪へと発展した背景には、自己の正当性を過信し、法的な解決手段ではなく暴力に訴えた被告らの歪んだ倫理観がありました。被害者の心身に深い傷を残したこの事件は、社会における「正義」の行使と、その逸脱がもたらす深刻な影響について、私たちに改めて問いかけるものとなっています。