大晦日の国民的番組「NHK紅白歌合戦」の出場歌手が発表され、その人選に早くも視聴率への懸念が広がっています。特に目立ったサプライズや、誰もが知るヒット曲を持つアーティストの不足が指摘される中、最も注目を集めているのが初出場を果たす「ハンバート ハンバート」です。ベテラン勢の周年記念出場や旧ジャニーズグループの復活といった話題はあるものの、全体的なインパクトの欠如がささやかれており、異色の夫婦デュオが番組に新たな風を吹き込むと期待されています。
視聴率への懸念と「昭和世代」の動向
今年の紅白歌合戦のテーマは「つなぐ、つながる、大みそか。」とされていますが、民放プロデューサーからはそのテーマとは裏腹に、視聴率を支える主要層である「昭和世代」の関心低下が指摘されています。近年の紅白では、誰もが口ずさめるような昭和世代向けのヒット曲が減少傾向にあり、知名度の高いアーティストも少ないのが現状です。aespa、CANDY TUNE、ちゃんみな、HANA、FRUITS ZIPPERなど、今回初出場する10組のアーティストは、平成・令和の若い世代を取り込む狙いがあることは明白です。しかし、紅白の強固な基盤を形成しているのは依然として昭和世代であり、この人選では「つなぐ、つながる」という目標達成が危ぶまれています。
昨年の紅白歌合戦の視聴率は、前半34.2%、後半40.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)とかろうじて40%台を維持しました。しかし、今年は演歌枠がさらに縮小され、選出された演歌歌手も常連組が多く、新鮮味に欠けるとの声も聞かれます。デビュー50周年の岩崎宏美(37年ぶり15回目)、40周年の久保田利伸(35年ぶり2回目)、そして同じく40周年のTUBE(27年ぶり3回目)といった周年記念アーティストの出場は喜ばしいものの、彼らは紅白以外の音楽番組でも目にする機会が多いため、特別感や希少性が薄いと感じる視聴者も少なくありません。
第76回紅白歌合戦の司会を務める綾瀬はるか
注目集める異色の実力派「ハンバート ハンバート」
このような状況の中、特に注目を集めているのが、初出場ながらも結成から27年というキャリアを持つベテラン夫婦デュオ「ハンバート ハンバート」です。彼らはNHKの朝ドラ「ばけばけ」の主題歌「笑ったり転んだり」を担当し、幅広い層にその名を広めました。彼らの音楽スタイルはフォークやカントリーに限定されず、一般的なポップスとも一線を画しています。ロック、ラップ、ブルース、ジャズといった多様な要素が融合した、独自の音楽世界を築き上げており、その個性的なサウンドは民放の歌番組スタッフからも高い評価を得ています。
結成秘話と音楽活動の軌跡
ハンバート ハンバートは、佐藤良成と佐野遊穂の夫婦デュオであり、3人の息子を持つ家庭を築いています。グループのルーツは、大学時代にボブ・ディランなどのコピーバンドを組んでいた良成さんがボーカルを務めていたことにあります。バンド名は、ウラジーミル・ナボコフの小説「ロリータ」の主人公であるハンバート・ハンバートから名付けられました。当時、バンドに小柄な女性コーラスを加えることでよりおしゃれになるだろうと考えた良成さんは、高校の後輩である遊穂さんを誘いました。しかし、遊穂さんの繊細でありながらも独特で澄んだ歌声は、瞬く間にメインボーカルの座を奪うほどのインパクトを持っていました。
その後、バンドメンバーが就職などで去っていく中、良成さんと遊穂さんの二人が残り、夫婦デュオとして活動を継続することになります。二人は下北沢(東京・世田谷区)のライブハウスを中心に地道な音楽活動を続け、2001年にインディーズデビューを果たしました。
「おなじ話」「アセロラ体操のうた」で広がる人気
ハンバート ハンバートの知名度が全国的に広がったのは、2005年にFMラジオで流れた楽曲「おなじ話」がきっかけでした。この曲はじわじわと人気を集め、彼らの代表曲の一つとなります。さらに2010年には、ニチレイアセロラドリンクのCMソングとして「アセロラ体操のうた」が起用され、そのユニークな楽曲が大きな話題を呼び、彼らの名をより一層多くの人々に知らしめることとなりました。
結論
第76回NHK紅白歌合戦は、人選のインパクト不足から視聴率への懸念が拭えないものの、初出場ながらも確かな実力と独自の世界観を持つ「ハンバート ハンバート」の登場は、番組に新たな魅力を加えるでしょう。彼らの音楽が、幅広い世代の視聴者をつなぎ、今年のテーマである「つなぐ、つながる」を実現する鍵となるか、そのパフォーマンスに期待が寄せられています。





