安倍晋三元首相銃撃事件の公判で、殺人などの罪が問われている山上徹也被告(45)の被告人質問が進んでいる。母親の信仰から家庭が崩壊したことが、どうして安倍元首相を銃撃することにつながったのか、その謎が被告人質問のなかで少しずつ解き明かされてきた。
【写真】山上徹也被告が最初にターゲットにしたのはこの人だった
山上被告の母親は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への信仰にのめり込み、家庭を顧みず1億円を超す献金をしていた。山上被告はその恨みから、当初、教団トップの韓鶴子氏(現在韓国で請託禁止法違反などに問われて公判中)やその親族を狙うことを考えていた。
2018年、韓鶴子氏の娘が岡山県に来ることを知った山上被告は、襲撃しようとナイフや催涙ガススプレーを準備し、旧統一教会のイベント会場周辺で待機した。韓氏の娘が姿を見せた。しかし、
「周りをボディーガードが固めていて、自分は動けず、俺はいったい何をしているんだと情けない気持ちになった」
その後、19年にも愛知県の中部国際空港近くの展示会場に来る韓氏本人を狙おうと現場まで赴いた。しかし、会場の中に入れず断念。襲撃用に自作した火炎瓶は海に捨てた。
当時勤務していた工場の同僚に、山上被告は19年10月6日午後9時にこんなメッセージを送っていた。
〈名古屋まで行って帰ってきました〉
〈報告させてください。作戦失敗でした。恥ずかしながら帰ってまいりました。これが言いたかったんです〉
同僚にメールで理由を問われると、こう返していた。
〈非合法活動です〉
〈俺、名古屋である人間を殺すつもりだったんですよ〉
〈人を殺すのは自分が死ぬのとそれほど変わらない〉
■「距離をとって襲撃するには拳銃がいい」
強い殺意をもった山上被告は、襲撃のために圧力鍋で爆弾を作ることも考えたが、
「他の人に被害が及ぶのはよくない。距離がとれるように襲撃するためには拳銃がいい」
と、銃を使った襲撃を考え始めた。
一度は、拳銃を購入しようと、インターネットで探した売人と思われる人物に2020年10月メールで連絡をとって発注したが、約20万円をだましとられてしまう。21年ごろには、自分で銃を作ろうとして、水道管のパイプ、バッテリー、スイッチなど数百品目を超える材料を買い集めた。銃を作り上げ、自作した銃を持って奈良市内の山中で試射を繰り返し、4枚重ねにしたべニア板を貫通する威力にまでこぎつけた。山上被告が携帯電話に保存していた試射の様子を録画した動画が法廷で公開され、相当な破壊力が見てとれた。






