40時間余りにわたって燃え盛った大火は、ブランド魚の名産地を容赦なくのみ込んでいった。11月18日に大分市の佐賀関地区を襲った大規模火災。火元とみられるのは、老いた元漁師の住む一軒家だった。今回、唯一の犠牲者となってしまった男性の身に何があったのか。
【写真を見る】すさまじい勢いで家屋が燃え上がり… 避難者が撮影した現場の惨状
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焼失面積は実に4万8900平方メートル。未曾有の大火災は、さる18日の夕刻に発生した。
「焼損した建物は約170棟、当日は強風が吹いており、また現場は狭く入り組んだ路地に木造家屋が密集しているため、延焼してしまいました。20日昼には佐賀関半島にある住宅地が『鎮圧状態』となりましたが、漁港から約1.5キロ離れた離島では火災が続いています」(社会部記者)
「関サバ」「関アジ」で名高い佐賀関にも、ご多分に漏れず過疎化の波が押し寄せている。地区の高齢化率は6割近くに達し、今回の焼損建物のうち、空き家は4割ほどになるという。一般的に空き家は延焼リスクの大きな要因となるのだが、それでも今回は、火災の規模に比して人的被害は死亡1、負傷者1にとどまっている。先の記者いわく、
「地域の連携、とりわけ現場から1.5キロほど離れた介護施設が車をフル稼働させ、避難所とのピストン輸送に尽くしたのも大きかったといえます」
身を挺して住民を守った社会福祉法人「大翔会」の宿利(しゅくり)友也施設長(39)に聞くと、
「最初に皆さんが避難していた現場近くの公民館から、現在の避難所までは徒歩で10分以上かかります。私たちは全部で5台の車を動かし、3往復ほどして30人以上の方々を運びました。当時は寒かったので『ようやく暖かいところに入れた』というお声も頂きました」
そんな中、火元とみられる民家の焼け跡からは1体の亡きがらが発見されていた。県災害対策本部は21日、身元はこの家に住むAさん(76)であると発表。小柄でやせ型のAさんは体調を崩しており、前日に両脇を抱えられながら医療施設から自宅へと戻ってきたばかりだったという。不慮の火災に巻き込まれたご本人は、どんな暮らしを送っていたのか……。






