日本の地方自治体において、首長によるセクシャルハラスメント(セクハラ)問題が相次いで表面化し、大きな波紋を呼んでいます。特に福井県知事の辞職に続き、佐賀県有田町長、そして沖縄県南城市前市長の事例は、地方行政におけるコンプライアンス意識の欠如と、その根深い背景を示唆しています。本稿では、これらの具体的な事例を詳述し、専門家の見解を交えながら、地方首長によるセクハラ問題の現状と課題を深く掘り下げていきます。
福井県知事のセクハラ問題と辞職の経緯
2025年12月4日、福井県の杉本達治知事の辞職が県議会で承認されました。杉本知事は、複数の県職員に対しセクハラに該当する不適切なメールを送っていた問題が取り沙汰され、12月3日に県議会へ辞職願を提出しました。
福井県庁舎
全国紙政治部記者によると、杉本知事は東京大学を卒業後、自治省(現・総務省)に入省し、地方自治の世界を渡り歩いてきました。福井県副知事を経て2019年の知事選で当選、2023年4月には再選を果たし、2期目の途中でした。今年4月に県職員へ不適切なメールを送ったことでセクハラの通報を受け、年明けには第三者による調査報告書が公表される予定でした。杉本知事自身は、メールを「軽い気持ちで書いたつもりだった」としながらも、セクハラとの認識に至ったとして、自ら辞職を決断したと報じられています。
相次ぐ地方首長のセクハラ事案
杉本知事のケースだけでなく、地方首長によるセクハラ辞任・失職の事例は後を絶ちません。
佐賀県有田町長の辞職
2025年12月2日には、佐賀県有田町の松尾佳昭町長が辞職を表明しました。記者会見で松尾町長が語ったところによれば、9月中旬に企業誘致に関連して訪問した愛知県のメーカーでの接待の際、2次会の場で接客した女性従業員の体を触ったとされています。松尾町長は当時「酩酊状態だった」と説明していますが、酒に酔っていたとしても、セクハラ行為の言い訳にはならないとの批判が上がっています。
沖縄県南城市前市長の失職
さらに悪質なケースとして挙げられるのが、沖縄県南城市の古謝景春前市長の事例です。古謝前市長は2024年11月に公用車の運転手だった女性への強制わいせつ容疑で書類送検されましたが、嫌疑不十分で不起訴となりました。しかし、複数のセクハラ行為が取り沙汰され、2025年5月に市が設置した第三者委員会の報告書では、複数の女性職員へのキスや体を触るセクハラ行為が認定されました。市議会は市長の不信任決議案を可決し、市長は市議会を解散しましたが、その後の市議選で不信任案に賛成する議員が多数当選しました。市長は議決前に辞職届を提出しましたが、市議会側は受理を拒否し、不信任案が可決された結果、11月17日に失職しています。古謝前市長に関しては、女性職員に「口止め」を求めるような音声も報じられており、悪質性が際立っています。
背景と専門家の指摘
地方自治体の首長によるセクハラ事案が相次ぐ背景について、政治ジャーナリストは以下のように指摘しています。
「一部の地方には昔ながらの守旧的な空気が残っていて、コンプライアンス意識が更新されていないようにも見えます。南城市の古謝前市長のケースのように、女性職員に口止めを求めるような音声が報じられるほど悪質な事例も存在します。また、福井の杉本知事のケースで顕著なように、悪意や故意がなくともセクハラを働いてしまうケースもあります。ハラスメント防止のためには、自らの意識を高めるのはもちろんのこと、場合によっては専門家による研修を受ける必要もあるでしょう。」
この指摘は、単なる個人の問題に留まらず、組織文化や意識改革の必要性を示唆しています。地方自治体のトップとして、その言動は職員だけでなく住民全体に大きな影響を与えます。ハラスメントに対する認識の甘さや、時代にそぐわない慣習が温存されている現状は、早急な改善が求められます。
結論
福井県、佐賀県、沖縄県で相次いだ地方首長によるセクハラ問題は、日本の地方行政におけるコンプライアンス意識の課題を浮き彫りにしました。軽はずみなメールから悪質な口止め行為まで、その態様は様々ですが、いずれも公職の立場を利用した不適切な行為であり、その責任は重いものです。このような事態が「氷山の一角」でないことを願うばかりですが、再発防止のためには、個人の意識改革に加え、組織全体でのハラスメント防止策の徹底、専門家による研修導入、そして透明性の高い監視体制の構築が不可欠であると言えるでしょう。





