OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本人の平均睡眠時間は世界各国で最も短く、世界一の睡眠不足であることが指摘されています。多くの人が寝付きの悪さや、夜中に目が覚めてしまいその後眠れなくなる「中途覚醒」の悩みを抱えています。本記事では、睡眠専門医の渥美正彦氏の著書『ぐっすり! 1万人を治療した専門医が教える最強の睡眠メソッド』から、この「中途覚醒」を改善し「ぐっすり」眠るための具体的な方法を紹介します。
「プチ夜ふかし」とは?専門医が推奨する中途覚醒対策
「夜中に目が覚めてしまい、その後なかなか眠れない」という中途覚醒は、睡眠の質を大きく低下させる要因です。このような悩みを毎日のように抱えている方におすすめしたいのが、寝床に入る時間を少し遅らせる「プチ夜ふかし」です。この方法は、不眠症の認知行動療法で用いられる「睡眠制限療法」を、一般の方でも取り入れやすいようにアレンジしたものです。
夜中に目が覚め、しばらく眠れなくなってしまう悩みを抱えている人は多いものです
「プチ夜ふかし」の実践ステップ
「プチ夜ふかし」を実践するための手順は以下の通りです。
- 睡眠記録の作成: まず、2週間程度の睡眠記録をつけ、実際に眠れている時間を記録します。これにより、自身の睡眠パターンを正確に把握することができます。
- 寝床にいる時間の設定: 記録した平均睡眠時間に30分ほどプラスした時間を「寝床にいる時間」として設定し、起床時間と就寝時間を決定します。例えば、平均睡眠時間が7時間であれば、寝床にいる時間は7時間30分となります。朝7時に起床したい場合、布団に入るのは午後11時30分という計算になります。
- 睡眠効率による調整: その後、睡眠効率を確認しながら調整を行います。睡眠効率は「実際の睡眠時間 ÷ 寝床にいた時間 × 100」で計算されます。この数値が85~90%以上になれば寝床に入る時間を少し早め、80%以下であれば寝床に入る時間を少し遅らせて調整します。
中途覚醒が増え、睡眠効率が低くなってしまった場合に、寝床で過ごす時間を「減らす」ことが「プチ夜ふかし」の重要なポイントとなります。
なぜ「プチ夜ふかし」が中途覚醒に効果的なのか?
この「プチ夜ふかし」が中途覚醒の改善に役立つのは、「睡眠圧」と「睡眠効率」という二つの要素が関係しているからです。私たちは日中活動するほど、脳内に「睡眠物質」であるアデノシンが蓄積され、眠気(睡眠圧)が高まります。睡眠圧が十分に高まっていない状態で寝床に入ると、眠りが浅くなりやすく、夜中に目が覚めてしまう原因となります。
寝床で過ごす時間を短くすることで、体はより強い睡眠圧を感じるようになります。これにより、より深く質の高い睡眠を得られる可能性が高まり、中途覚醒の頻度を減らすことにつながるのです。
まとめ
日本における深刻な睡眠不足は、多くの人々に中途覚醒の悩みをもたらしています。睡眠専門医が提唱する「プチ夜ふかし」は、自身の睡眠時間を正確に把握し、寝床にいる時間を戦略的に調整することで、睡眠圧を高め、結果的に睡眠の質を向上させる効果的な方法です。夜中に目が覚めてしまうことに悩んでいる方は、このメソッドを試してみてはいかがでしょうか。規則正しい睡眠習慣を身につけ、質の高い休息を手に入れましょう。
参考文献
- 渥美正彦『ぐっすり! 1万人を治療した専門医が教える最強の睡眠メソッド』





