忘年会、クリスマス、新年会――年末年始は豪華なごちそうとアルコールを楽しむ機会が格段に増える季節です。しかし、「自分は酒に強いから」「胃腸が丈夫だから大丈夫」と過信し、アルコール、糖質、脂質を無制限に摂取し続けると、その代償は静かに肝臓と膵臓に蓄積されていきます。この特別な時期を健康に乗り切るため、暴飲暴食がこれらの臓器に与える悪影響と、それらを守るための具体的な方法を詳しく見ていきましょう。
飲酒が肝臓に与えるダメージのメカニズム
私たちが摂取したアルコールは、胃や小腸から吸収された後、門脈を通って肝臓へと運ばれます。肝臓では、アルコールはアセトアルデヒドという非常に毒性の高い物質に代謝されますが、この過程で大量の活性酸素が発生します。二日酔いの主な原因となるのが、このアセトアルデヒドです。
活性酸素とアセトアルデヒドは、肝細胞やミトコンドリアを損傷し、炎症と線維化(組織が硬くなること)を進行させます。これらの変化が積み重なると、「脂肪肝」から「アルコール性肝炎」、「肝硬変」、そして最終的には「肝がん」へと至る“負のスパイラル”に陥るリスクが高まります。
さらに、アルコールは腸内細菌叢のバランスを乱し、腸のバリア機能を低下させることも判明しています。これにより、腸内細菌由来の毒素成分であるエンドトキシンが門脈から肝臓に流れ込み、肝臓の炎症をさらに悪化させることがわかっています。
アルコールだけではない脂肪肝のリスク
アルコールの多量摂取が脂肪肝を引き起こす主な理由は、アルコールが脂肪の分解を抑制し、肝臓内へ中性脂肪の蓄積を促進する作用があるためです。そのため、脂肪肝と聞くとアルコールが原因だと思われがちですが、実際には糖尿病や肥満が主な原因となるケースも少なくありません。
特に、体重の割にお腹周りだけが突出している人や、BMI(肥満度指数)が25を超えている人にこのタイプの脂肪肝が多く見られます。世界の様々な研究を統合したデータによると、成人のおよそ4人に1人が、このような非アルコール性の脂肪肝を抱えていると推定されています。
年末年始に暴飲暴食で疲弊した肝臓と膵臓のイラスト
年末年始のコース料理と飲み放題に潜む罠
年末年始の忘年会や新年会では、しばしばコース料理が提供されます。こうしたコース料理には、揚げ物など油を多く使った高カロリーな料理が含まれることが多く、無意識のうちに過剰なエネルギーを摂取しがちです。このような食生活が続けば、当然ながらエネルギー過多となり、肝臓に負担をかけ、脂肪肝のリスクを著しく高めることになります。飲み放題も同様に、アルコールの摂取量を増加させ、肝臓や膵臓への負担を増大させます。
肝臓と膵臓を守るための実践的なアドバイス
肝臓や膵臓の健康を守るためには、年末年始の期間中であっても、意識的な食生活と飲酒習慣が不可欠です。
- 飲酒量のコントロール: 適量を心がけ、休肝日を設けることが重要です。アルコールは分解される際に肝臓に大きな負担をかけるため、連続飲酒は避けましょう。
- バランスの取れた食事: 揚げ物や脂質の多い料理は控えめにし、野菜や食物繊維を豊富に含む食品を積極的に取り入れてください。血糖値の急激な上昇を抑えることも、膵臓の負担軽減につながります。
- 適切な水分補給: アルコール摂取時は、水やお茶を合間に飲むことで、脱水を防ぎ、アセトアルデヒドの排出を助けます。
- 適度な運動: エネルギー過多を防ぎ、脂肪肝のリスクを低減するためにも、日常的に体を動かす習慣を維持しましょう。
- 定期的な健康診断: 肝臓や膵臓の異常は自覚症状が出にくいことがあります。定期的な健康診断で早期発見・早期治療に繋げることが肝心です。
年末年始の楽しいひとときを健康的に過ごすためにも、これらの点に留意し、ご自身の体と向き合う時間を持ちましょう。





