昔、日韓を舞台に活躍した韓国プロレス界のスター大木金太郎ことキム・イル(1929~2006年)の名前が久しぶりに韓国のマスコミに出ていた。スポーツを通じた国家功労者としてこのほど国立墓地に安置されたという。
彼は韓国プロレス界の草分けで、1960~70年代を中心に韓国では日本人プロレスラーをやっつける役を演じ韓国人を熱狂させた。戦後の日本で米国人レスラーと対決し日本人を熱狂させた力道山と似た役割の国民的英雄だった。50年代末、日本に密航して力道山に弟子入りし日本では「大木金太郎」のリングネームで知られた。ジャイアント馬場やアントニオ猪木と同じ時代に活躍し、韓国人のケンカ作法(?)である“頭突き”を得意技にし人気があった。
引退後は商売に失敗するなど尾羽打ち枯らし、晩年は高血圧など満身創痍(そうい)で長く入院していた。そのころ病院で昔話を聞いたことがあるが開口一番、日本語で「サンケイスポーツにはずいぶんお世話になりました」と喜んでくれた。
密航者なのに受け入れられ、日韓双方でスターになれた人生を振り返り「みんな日本のおかげですよ」といっていた。手土産に日本の週刊誌を何冊か持っていったのだが、これにもうれしそうだったことを今も覚えている。(黒田勝弘)