斎藤元彦兵庫県知事の選挙違反疑惑:専門家が冷静な議論を呼びかけ、公選法の時代遅れも指摘

兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事を巡り、選挙違反疑惑が浮上しています。中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也氏がこの問題について自身のX(旧Twitter)で言及し、冷静な議論の必要性を訴えています。

選挙準備行為への対価支払いは適法?野村氏の見解

野村氏によると、選挙前の立候補準備行為(情勢分析、ポスター・ウェブサイト制作など)への対価支払いは適法です。今回のケースで問題となっている70万円の支払いは、立候補準備行為への対価としては常識的な金額であり、選挙運動の対価の先払いとは認められないため、運動員買収には当たらないと野村氏は述べています。また、事前収賄の可能性についても、現時点での事実関係からは悪意のある憶測だと指摘しています。

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真の争点は?公選法と政治資金規正法の観点から

しかし、解決すべき問題は残っています。それは、無償の役務提供(ボランティア)が、(1)公職選挙法199条1項で禁じられている請負業者等からの寄付、(2)政治資金規正法21条1項で禁じられている公職の候補者に対する会社からの寄付に該当するかどうかです。

(1)については、選挙期間中にPR会社や社長個人が兵庫県と「請負その他特別の利益を伴う契約」を結んでいたかが問題となります。過去の契約は関係ありません。仮に社長個人が兵庫県の審議会委員であったとしても、それは委任契約であり請負契約ではない上、報酬額も少なく「特別の利益を伴う契約」とは言えないでしょう。したがって、争点は、選挙期間中にPR会社が兵庫県の請負業者であったか、そしてボランティア活動が「会社による寄付」と認定されるかに絞られます。

(2)についても、ボランティア活動が「会社による寄付」と認定されるかが鍵となります。

メディアの憶測報道に警鐘、冷静な議論を

野村氏は、テレビ等で様々な憶測が飛び交っている現状を指摘し、論点は絞られているのだから、過大な攻撃や過少な評価を避け、事実に基づいた冷静な議論が重要だと訴えています。

ネット時代に対応した公選法改正の必要性

さらに野村氏は、現行の公職選挙法はネット時代の選挙運動に対応しておらず時代遅れだと指摘。裕福な候補者だけが優秀なネットPR業者を雇える現状は問題だが、選挙期間中のウェブ活動支援をすべて無償とするのも疑問だとし、車上運動員(いわゆるウグイス嬢)と同様の規制を検討する時期に来ているのではないかと問題提起しています。