韓国・務安国際空港で発生した済州航空機胴体着陸事故。不幸中の幸いと言える生還劇の裏で、被害拡大の要因としてローカライザー(方位角表示施設)の土盛り構造が注目を集めています。本稿では、事故の背景、専門家の意見、そして今後の空港安全対策について詳しく解説します。
ローカライザー土盛り構造とは?事故との関連は?
事故映像を分析すると、胴体着陸後の航空機がコンクリート製のローカライザー土盛りと外壁に衝突し、爆発炎上を引き起こした様子が確認できます。国土交通省は、当該ローカライザーは空港施設法に基づき合法的に設置されたと主張しています。滑走路端安全区域外に設置されたローカライザーには、壊れやすい支柱を使用する規定は適用されないとのことです。
alt務安国際空港の事故現場。ローカライザーの土盛り構造が事故被害の拡大に影響を与えた可能性が指摘されている。
しかし、空港離着陸場設置基準や空港設計細則には、ローカライザー設置地点まで終端安全区域を延長するよう規定されているとの指摘もあり、議論を呼んでいます。国土交通省は、土盛り構造は滑走路の高さを超えないと本来の性能を発揮できないため、過去の空港設計における最適な方法として採用されたと説明しています。
専門家の見解:安全規定の見直しを提言
専門家らは、今回の事故を教訓に、ローカライザー周辺の安全規定を見直すべきだと提言しています。草堂大学消防防災学科のソン・ウォンベ教授は、「ローカライザーの基礎を壊れやすくする、安全区域を延長するなど、安全規定を補完する必要がある」と指摘。又石大学消防防災学科のコン・ハソン教授も、「構造物を壊れやすくしたり、最小の重量・高さにするなど改善が望ましい」と述べています。
航空業界関係者からは、ローカライザーも航空安全のための施設であり、空港ごとに状況に応じて設置されているため、無条件に規制強化するのは適切ではないとの意見も出ています。今後の調査結果を踏まえ、慎重な対応が必要と言えるでしょう。
2015年広島空港の事例:壊れやすい支柱が被害を軽減
2015年4月に広島空港で発生したアシアナ航空機ローカライザー衝突事故では、ローカライザーの支柱が壊れやすい素材であったため、航空機は施設を突き抜け、草地で停止しました。この事例は、壊れやすい構造物が被害軽減に貢献することを示唆しています。
今後の空港安全対策:多角的な視点からの検討が必要
国土交通省は、航空鉄道事故調査委員会による調査結果を待ち、土盛り構造と被害拡大の因果関係を慎重に検討する方針です。また、コンクリート方式の基礎を持つローカライザーが設置されている他の空港についても、安全対策の見直しが必要となる可能性があります。
今回の事故は、空港における安全対策の重要性を改めて浮き彫りにしました。ローカライザーの構造だけでなく、滑走路端安全区域の設定、周辺構造物の設計など、多角的な視点から安全対策を強化していく必要があるでしょう。
将来の航空機事故を未然に防ぐためにも、関係機関による徹底的な調査と迅速な対応が求められています。