紅白歌合戦といえば、毎年年末の風物詩として、その年にヒットした曲や時代を超えて愛される名曲が披露される華やかな舞台。数々のアーティストが個性を爆発させ、記憶に残るパフォーマンスを繰り広げてきました。2010年の第61回紅白歌合戦で、亡き祖母との温かい思い出を歌った「トイレの神様」で多くの人の心を掴んだ植村花菜さんも、その一人です。今回は、異例の9分52秒という長尺で話題となった「トイレの神様」の紅白秘話に迫ります。
植村花菜、紅白への熱い想い
「紅白歌合戦に出場することは、長年の憧れでした。親孝行にもなると思い、出場が決まった時は本当に嬉しかったです。しかも、あの長い曲をノーカットで歌わせていただけたことには、感謝しかありません。」と、植村さんは当時を振り返ります。
2010年「第61回NHK紅白歌合戦」で『トイレの神様』を歌った植村花菜さん
「トイレの神様」はフルバージョンで9分52秒という長さ。紅白歌合戦は多くの歌手が出演するため、1組あたりの持ち時間は約3分といわれています。しかし、祖母と孫の絆を描いた歌詞を大切に歌う植村さんにとって、フルコーラスで視聴者に届けたいという強い想いがありました。本番では、歌詞の部分は全てそのままに、イントロや間奏を調整することで7分50秒に短縮したバージョンを披露しました。
フルコーラスへのこだわり
「『トイレの神様』は、3月にリリースしたミニアルバム『わたしのかけらたち』に収録されていた曲で、ラジオがきっかけで徐々に注目を集め、多くの方に聴いていただけるようになりました。様々な番組に出演させていただきましたが、どの番組でも『フルコーラスで歌わせていただきたい』とお願いしてきました。それが叶わず、出演をお断りした番組もありました。1年間を通してそのスタンスを貫いてきたので、紅白歌合戦だからといって一部だけを歌うということは考えられませんでした。」
他の歌手からは、「誰の歌もカットするところはない」という意見もあったそうです。
現在41歳の植村花菜さん。現在ニューヨークに移住し米国と日本で音楽活動を継続している
「そういったご意見があったことは承知していました。もちろん、それぞれの考えがあると思いますし、ごもっともだとも思っていました。しかし、私は1年間、全ての番組でフルコーラスで歌わせていただいてきました。最後にそれを覆してしまうことは、これまでフルコーラスで歌わせてくださった番組に失礼にあたると思い、紅白歌合戦であっても歌詞を全て歌えないのであれば出場しなくても仕方がないと覚悟していました。『トイレの神様』は、歌詞を全て聴いて初めて伝わる歌なので。」
紅白歌合戦という舞台の裏側
紅白歌合戦の楽屋などでは、周囲からの反発やプレッシャーはなかったのでしょうか? 植村さんの紅白歌合戦への強い想いと、周囲の反応、そして舞台裏のエピソードは、次回の記事で詳しくお届けします。
心に残る名曲「トイレの神様」
植村花菜さんの「トイレの神様」は、多くの人々の心に深く響く名曲となりました。紅白歌合戦でのパフォーマンスは、その感動をさらに大きなものにしたと言えるでしょう。 この曲は、世代を超えて愛され続ける、日本の音楽史に残る名曲の一つとなるでしょう。