スウェーデン、オオカミ駆除に踏み切るも保護団体から懸念の声

スウェーデンで再びオオカミ猟が解禁され、政府は生息数の約10%にあたる30頭の駆除を許可しました。しかし、絶滅危惧種指定のオオカミを駆除することに対し、保護団体などから強い懸念の声が上がっています。今回は、スウェーデンのオオカミ猟をめぐる現状と、その背後にある複雑な問題について詳しく解説します。

オオカミ猟の歴史と現状

スウェーデンでは1970年代、狩猟によってオオカミは絶滅寸前にまで追い込まれました。その後、EUの保護法の下で徐々に個体数が回復してきたものの、2010年からは再び免許を持つハンターによる駆除が許可されています。

alt オオカミが雪原を歩いている様子。alt オオカミが雪原を歩いている様子。

今回の駆除許可の背景には、地方住民や家畜への被害の懸念があるとされています。政府はオオカミの最低生息数を300頭から170頭に引き下げ、今回の駆除は、この新たな目標に向けた取り組みの一環と説明しています。スウェーデン環境保護局はこの数値を「好ましい基準値」と表現していますが、保護団体からは批判の声も上がっています。

保護団体からの反発とベルン条約

保護団体は、オオカミの駆除はEU法に違反するとして、EU委員会に訴えを起こしています。また、オオカミの頭数が減少すれば、遺伝的多様性の低下による問題が深刻化すると懸念しています。WWF(世界自然保護基金)も、科学的根拠に基づかない駆除は重大な誤りだと強く非難しています。

ベルン条約における保護ステータスの変更

2022年12月、欧州評議会のベルン条約委員会は、オオカミの保護ステータスを「厳重に保護」から「保護」へと格下げする提案を採択しました。「厳重に保護」の場合、意図的な殺処分や捕獲は認められませんが、格下げにより各国はオオカミの頭数管理に関してより柔軟な対応が可能になります。この決定は、保護団体から更なる反発を招いています。

スウェーデンにおけるオオカミの保護と管理のジレンマ

スウェーデンでは、オオカミはレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。一方で、家畜への被害や人への恐怖から駆除を求める声も根強く存在します。野生動物保護と地域住民の生活の両立という難しい課題に、スウェーデン政府は揺れています。

alt ハンターが森の中で銃を構えている様子。alt ハンターが森の中で銃を構えている様子。

専門家の中には、「地域住民との共存を目指した対策、例えば、家畜を守るための柵の設置や、オオカミの生態に関する教育活動などを強化する必要がある」と指摘する声もあります。(スウェーデン自然研究所、ラーシュ・ニルソン氏談)。

オオカミの保護と管理をめぐる議論は、スウェーデン国内だけでなく、国際的な注目を集めています。今後の動向が注目されます。