中国経済の減速が深刻化し、高学歴の若者たちが希望の職に就けず、能力に見合わない仕事に甘んじている現状が浮き彫りになっています。修士号を取得しても、ドライバーや作業員、さらには映画のエキストラとして働く若者たち。彼らの現状と、その背景にある中国経済の課題、そして未来への展望を探ります。
学歴だけでは生き残れない中国社会
近年、中国では大学卒業者数が急増する一方で、経済の減速により雇用市場は冷え込んでいます。不動産や製造業といった主要セクターの低迷が、若者の就職難を深刻化させているのです。公式発表の若年失業率は減少傾向にあるものの、依然として高い水準を維持しています。
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金融の修士号を取得したにも関わらず、火鍋屋でウェイターとして働く孫展(ソン・ジャン)さんのようなケースは、もはや珍しくありません。高収入の職を夢見て勉学に励んできた若者たちは、厳しい現実を突きつけられているのです。「投資銀行で働くのが夢だった」と語る孫さんの言葉には、無念さが滲みます。
家族からのプレッシャーと葛藤
高学歴の若者たちが能力以下の仕事に就くことは、家族からの批判やプレッシャーにも繋がっています。孫さんもウェイターの仕事を選んだことで両親から非難され、公務員になることを勧められたといいます。しかし、孫さんは「これは自分の選択」だと語り、ウェイターとして働きながら飲食業を学び、将来は自分の店を開くという夢を抱いています。
中国の若者たちは、社会や家族の期待と、自身のキャリアプランの間で葛藤を抱えているのです。キャリアコンサルタントの李華氏(仮名)は、「伝統的な価値観と変化する社会のニーズとのギャップが、若者たちの苦悩を生んでいる」と指摘します。
高学歴ワーカーの新たな道:副業、起業、そして…映画エキストラ?
雇用市場の厳しさから、多くの若者たちは従来の「良い職」という概念を見直し、新たな道を模索し始めています。副業や起業に挑戦する者もいれば、意外な分野にチャンスを見出す者もいます。
映画・テレビ業界という活路
近年、中国の映画・テレビ業界は活況を呈しており、エキストラの需要も高まっています。横店という映画の街には、演技の仕事を求めて多くの若者が集まっているといいます。かつて電子情報工学を学んでいた呉星海(ウ・シンハイ)さんも、その一人。エキストラとして働きながら、将来のチャンスを伺っているのです。
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資格を生かしたキャリアチェンジ
金融の修士号を取得後、スポーツ外傷・障害向けマッサージ院で研修中の呉丹(ウ・ダン)さんのように、全く異なる分野でキャリアを築こうとする人もいます。家族の反対を押し切り、自分の興味を追求する呉さんの姿は、新たなキャリアパスの可能性を示唆しています。
中国経済の未来と若者たちの展望
中国経済の減速は、若者たちのキャリアプランに大きな影を落としています。香港城市大学の張珺(チャン・ジュン)教授は、「中国大陸における雇用情勢は非常に厳しく、多くの若者は期待値を調整する必要がある」と述べています。
しかし、困難な状況の中でも、新たな可能性を模索し、挑戦を続ける若者たちがいます。彼らの柔軟性と適応力は、中国経済の未来を担う大きな力となるでしょう。
未来への希望
中国経済の先行きは不透明ですが、若者たちはそれぞれの夢を実現するために努力を続けています。希望の職に就くための研鑽、起業という新たな挑戦、そして異分野へのキャリアチェンジ。中国の若者たちは、変化の波に乗り、未来を切り開いていくでしょう。