トランプ氏の大統領令で揺らぐLGBTQ+の権利:不安と混乱広がる

アメリカ社会でLGBTQ+の人々の権利が揺らいでいます。ドナルド・トランプ前大統領が発令した一連の大統領令が、当事者や支援団体に大きな不安と混乱をもたらしているのです。本記事では、大統領令の内容と、それによって引き起こされている様々な影響について詳しく解説します。

LGBTQ+コミュニティへの影響:不安と混乱の渦中

トランプ前大統領が発令した大統領令は、LGBTQ+コミュニティにとって大きな打撃となっています。中でも、「女性を過激なジェンダー・イデオロギーから保護する」と題された大統領令は、連邦政府が認める性を「男性・女性」の2つだけに限定するもので、多様な性自認を持つ人々の存在を否定するものと批判されています。

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また、「化学療法・外科手術による性器除去から子どもを守る」という大統領令は、19歳未満への性適合治療への資金提供と促進を停止する内容です。これにより、成長過程にあるトランスジェンダーの若者が適切な医療を受けられなくなる可能性が懸念されています。LGBTQ+の若者の自殺防止に取り組む「トレバー・プロジェクト」のスティーブン・ホベイカ博士は、これらの政策が自殺率の上昇につながる可能性を指摘しています。複数のLGBTQ+支援団体も、トランプ氏の大統領就任初日に緊急支援サービスや電話相談の利用が急増したと報告しています。

パスポートの性別欄とトランスジェンダー受刑者の処遇

バイデン政権下で導入された、パスポートの性別欄に「X」を選択できる制度も、トランプ政権下では認められなくなっているようです。イギリスのガーディアン紙によると、米国務省はすでに「X」の選択肢を削除するよう指示を出しているとのこと。性自認が男女いずれでもない人々にとっては、自己を表現する手段が奪われることになります。

刑務所におけるトランスジェンダー受刑者の処遇も問題となっています。アメリカ自由人権協会(ACLU)とLGBTQ+訴訟支援団体「ラムダ・リーガル」は、女性用刑務所に収容されていたトランスジェンダー女性の一部が隔離施設に移送され、男性用刑務所への移送を告げられたと報告しています。

LGBTQ+に対する差別的な法案の増加とヘイトクライムの急増

トランプ前大統領は、再選を目指す中で「トランス問題」を争点化し、反トランスジェンダーの主張を展開しました。その結果、全米50州のうち26州で、青少年に対する性適合治療が制限される事態となっています。

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FBIの報告によると、LGBTQ+コミュニティを標的とするヘイトクライムは2023年に過去最多を記録しました。性自認を理由とする攻撃は前年から16%増加、性的指向に関するものは23%増加しています。保守派が連邦議会、連邦最高裁、ホワイトハウスで優勢となっていることが、LGBTQ+コミュニティへの攻撃を助長しているとの指摘もあります。

家族の不安とトランスジェンダー兵士の除隊

保守派の政府改革計画「プロジェクト2025」は、同性婚カップルの養子縁組と養育の禁止、政府機関での「性的指向」といった用語の使用停止を求めています。トランプ氏はこの計画との関係を否定していますが、計画の関係者に政権参加を要請しているという情報もあります。フロリダ州で養子縁組や生殖の権利を専門とする弁護士、カレン・パーシス氏は、不安を抱える家族からの相談が急増していると語っています。

さらに、トランプ前大統領はトランスジェンダーの兵士が軍務に就くことを禁じる大統領令にも署名しました。これに対し、市民権擁護団体が大統領令の無効を求める訴訟を起こしています。

トランプ前大統領が発令した一連の大統領令は、LGBTQ+コミュニティの人々の権利と生活に深刻な影響を与えています。今後の動向に注視していく必要があります。