伯方島。しまなみ海道で結ばれた美しい瀬戸内海の島。人口約5500人のこの島は、実は400人以上の外国人が暮らす「移民の島」としての顔も持っています。今回は、伯方島の造船業を支える技能実習生の現状、そして彼らが抱える課題に迫ります。
造船業を支える技能実習生たち
伯方島では、30年以上前から技能実習生を受け入れています。かつては中国人が多かったものの、近年はフィリピン、ベトナム、ミャンマー出身者が大半を占めています。島のベテラン造船業者によれば、「溶接や研磨といった仕事は、夏は暑く冬は寒い過酷な労働。日本人は集まらず、島の産業は外国人に支えられている」とのこと。早朝、自転車で造船所へ向かう実習生たちの姿は、島の日常風景となっています。
alt="早朝、自転車で通勤する技能実習生たち。白い息を吐きながら、造船所へと向かう。"
技能実習生のリアルな生活
フィリピン出身のフランシス・デラクルスさん(仮名・30代)は、7年前から伯方島の造船会社で働いています。技能実習生として3年間働いた後、一度帰国し、特定技能ビザを取得して再び来日しました。マニラには妻と二人の娘がおり、スマホで家族と話すことが日々の楽しみだと言います。
質素なワンルームアパートで暮らし、趣味は友人との酒盛り。しかし、店で飲むことはなく、ビールを買って寮で飲むそうです。「お店に行くお金はない」と語るフランシスさん。円安の影響で造船会社は活況ですが、実習生の懐事情は厳しいようです。
働き方改革が生んだ新たな課題
フランシスさんの給与明細を見ると、月給は25万円。しかし、厚生年金や昼食代などを差し引くと手取りは16万円。かつては残業で稼いでいましたが、働き方改革で残業が減り、収入も減少。「家族への送金で精一杯。遊ぶお金はない」と嘆きます。
alt="フランシスさんが手に持つ給与明細。手取り額は16万円。家族への送金でほとんどなくなってしまう。"
好景気の陰で…
伯方島の造船業は、技能実習生たちの働きによって支えられています。しかし、彼らが置かれている状況は決して楽ではありません。働き方改革は、長時間労働の是正という点ではプラスですが、収入減という新たな問題を生み出しています。技能実習生の生活を守るためには、より適切な労働環境と待遇の整備が不可欠です。 専門家である山田一郎氏(仮名・国際労働問題研究家)は、「技能実習制度の本来の目的は、途上国への技術移転。しかし、現状は日本企業の人手不足を補うための安価な労働力として利用されている側面もある。制度の在り方を見直す必要がある」と指摘しています。