戦後78年。今なお、過去の傷跡に苦しむ人々がいる。日帝強制動員被害者の遺族であるキム・ミョンベさん(94歳)は、亡き妻イム・ヨンスクさんの無念を晴らすため、今年も富山県の機械メーカー不二越の株主総会に足を運んだ。
繰り返される悲劇、消えない傷跡
キムさんの妻、イムさんはわずか12歳で不二越の軍需工場へ強制動員された。劣悪な環境下、過酷な労働を強いられたイムさんの受けた傷は深く、生涯消えることはなかった。2003年、イムさんは他の被害者と共に不二越を相手取り訴訟を起こしたが、無念のまま翌年この世を去った。
富山県富山市にある不二越の前で、亡くなった妻の写真を掲げるキム・ミョンベさん
10回目の株主総会、変わらぬ不二越の姿勢
キムさんは、妻の代理人として訴訟を引き継ぎ、2022年に韓国最高裁で勝訴判決を得た。しかし、不二越は賠償責任を認めず、今年も株主総会で同様の主張を繰り返した。黒澤社長は「強制連行・労働、賃金未払いの事実はなく、韓日請求権協定で解決済み」と述べ、キムさんの訴えに耳を貸そうとしなかった。キムさんは今回で10回以上、不二越の株主総会に出席している。
不二越強制動員被害者訴訟を支援してきた日本の市民団体「北陸連絡会」の事務所に掲げられた被害者の写真
第三者弁済案、深まる被害者との溝
韓国の尹錫悦政権が提示した「第三者弁済案」は、被害者と加害企業ではなく、韓国政府と被害者との間に新たな対立を生んでいる。この案は、不二越のような加害企業の責任を曖昧にし、被害者の尊厳を傷つけるものだと批判されている。
不二越本社前で集会を行う日本の市民団体「北陸連絡会」
風化していく記憶、残された時間は少ない
不二越が責任逃れを続ける間にも、被害生存者は年々減少している。最高裁判決で勝訴した被害者のうち、現在も生存しているのはわずか6人。一刻も早い解決が求められる中、キムさんのような遺族の闘いは、歴史の真実を後世に伝えるための重要な役割を担っている。
不二越本社前
支援を続ける市民団体、希望を繋ぐ
30年以上にわたり不二越の被害者を支援してきた日本の市民団体「北陸連絡会」は、被害者の権利と尊厳が回復するまで活動を続けるとしている。彼らの活動は、日韓両国の市民が協力し、歴史問題の解決に向けて共に歩むことの重要性を示している。