ウクライナ軍、クルスク州で苦戦 ロシア軍の反撃激化、撤退の岐路に

ウクライナ軍が昨年8月から一部を占領しているロシア西部クルスク州で、苦しい戦いを強いられている。ロシア軍の反撃が激しさを増す中、ウクライナ軍は防衛線を突破され、退路も狭まっていると軍事ブロガーらが報じています。今後の和平交渉の行方を左右する可能性もあるこの地域での攻防、その緊迫した現状に迫ります。

ロシア軍の猛攻、ウクライナ軍の防衛線崩壊

ウクライナは、将来の和平交渉での交渉材料としてクルスク州の一部を死守しようと懸命ですが、戦況は厳しさを増しています。軍事ブロガーやウクライナ軍と連携して戦局を追跡しているサイト「ディープステート」の情報によると、ウクライナが現在も占領している町スジャの南方で、ロシア軍に防衛線を突破されたとのこと。スジャにつながる主要道路の一部支配権を失い、近隣の村からも部隊を撤退させているようです。

altウクライナが占領するロシア西部の町スジャにある、損傷したレーニンの像。2024年8月撮影。altウクライナが占領するロシア西部の町スジャにある、損傷したレーニンの像。2024年8月撮影。

補給路遮断の危機、ウクライナ軍の苦境

ウクライナ紙ウクライナ・プラウダは、ロシア軍がウクライナ軍の補給路の遮断を図っており、ウクライナ側は「状況の安定化」に尽力していると報じています。防衛アナリストのヤン・マトベエフ氏も、ウクライナ軍は東西からロシア軍に圧迫され、退路は狭い回廊1本しか残されていないと分析。この回廊も幅わずか12~13キロしかなく、ウクライナ軍の占領地は狭まり、安全な場所の確保も困難になっていると指摘しています。

撤退か、死守か、ウクライナ軍の難しい選択

マトベエフ氏は、ウクライナ軍司令部は難しい決断を迫られていると述べています。越境攻撃作戦を完了し、部隊を温存してクルスク州から撤退するか、クルスク州で踏ん張り、すべてを失うリスクを取るか、その選択は容易ではありません。

著名なウクライナ人活動家、セルヒー・ステルネンコ氏は、現地部隊からの情報として、クルスク州の兵站事情は急速に悪化し、既に危機的状況にあると発信。スジャへの補給ルートはロシア軍の完全な射撃統制下にあると述べています。ロシアの従軍記者アレクサンドル・コッツ氏も、ウクライナ軍はもはや痛みを伴わずに撤退することは不可能だと断言。クルスク州駐留部隊への補給も途絶えていると指摘しています。

クルスク州の攻防、今後の行方

ウクライナ軍は苦境に立たされています。今後の和平交渉を有利に進めるためにも、クルスク州の確保は重要ですが、現状は非常に厳しいと言わざるを得ません。撤退か、死守か、ウクライナ軍司令部の決断が今後の戦況を大きく左右することになるでしょう。