スタートアップ業界、革新的なアイデアと情熱が渦巻く世界。しかし、その輝かしい舞台の裏では、女性起業家たちがセクハラという深刻な問題に直面している現実があります。今回は、自らもセクハラ被害を経験し、被害者のための団体「スタートアップユニオン」を立ち上げた松阪美穂氏に、その実態と対策について詳しく伺いました。
セクハラ被害の始まり:「帰り際に無理やりキス」
松阪氏が初めてセクハラ被害を受けたのは2019年。起業に向けて投資家を募るため、ある人物と面会した際のことでした。「事業計画を見てあげるよ」という誘いに応じ、会いに行った帰り際、突然キスをされたのです。
alt
相手は力も強く、抵抗することもできず、大きなショックを受けたといいます。当時、セクハラ対策の知識も乏しく、どうすればいいのか分からず、手探り状態だった松阪氏。待ち合わせ場所だけが指定され、具体的な面会場所が曖昧だったことも、被害につながった要因の一つだと振り返ります。
渋谷マークシティのような公共の場所を指定されても、そこからどこへ連れて行かれるか分からない不安は、多くの女性が共感するのではないでしょうか。面会場所の事前確認は、セクハラ対策として非常に重要です。
地位の差と“聞き分けの良い人”:被害を訴えられなかった理由
松阪氏は、相手が自分より地位の高い人物だったこともあり、つい“聞き分けの良い人”を演じてしまったと語ります。「打ち合わせの場所はどこになるのか」といった踏み込んだ質問をする勇気がなかったといいます。
セクハラ被害は、地位や権力の差を利用して行われることが多く、被害者が声を上げづらい状況を生み出します。声を上げられない自分を責める必要はありません。勇気を出して声を上げた人、声を上げられなかった人、どちらの気持ちも尊重されるべきです。
カップルカウンセリング事業への想い:日本に新しい文化を
松阪氏が目指していたのは、カップルカウンセリング事業の立ち上げ。アメリカでは離婚や結婚生活の悩みを専門家が相談に乗るカップルカウンセラーが普及していますが、日本ではまだ認知度が低いのが現状です。
友人同士で相談し合うだけでは根本的な解決に至らないケースも多いと指摘する松阪氏。専門的な知識に基づいたカウンセリングの必要性を訴えます。
福利厚生としてのカップルカウンセリング:北欧の事例に学ぶ
日本ではカウンセリングに抵抗感を持つ人も少なくありませんが、北欧では福利厚生の一環としてカップルカウンセリングが導入されている例もあるそうです。家庭内の安定が仕事のパフォーマンス向上につながるという考え方が浸透しているのです。
松阪氏は、日本にもカップルカウンセリングを福利厚生として導入することで、より働きやすい社会の実現を目指していました。
まとめ:女性起業家が安心して活躍できる未来へ
スタートアップ業界で活躍する女性起業家にとって、セクハラは大きな障壁となっています。松阪氏のような勇気ある告発と、スタートアップユニオンのような支援団体の活動が、セクハラのない社会の実現に向けて重要な役割を果たすでしょう。私たち一人ひとりが問題意識を持ち、女性が安心して活躍できる環境づくりに貢献していく必要があります。