国民の関心事である年金制度。政府が今国会提出を目指していた年金制度改革関連法案の行方が不透明となっています。自民党内では、夏の参院選への影響を懸念する声が上がっており、議論が難航しているようです。今回の改革案は将来の年金給付水準の引き上げを目的としていますが、追加の税負担の可能性も浮上し、参院選後への先送り論も出ています。一体何が問題となっているのでしょうか。この記事では、年金制度改革案の内容と、自民党内の反応、そして今後の見通しについて詳しく解説します。
厚生年金積立金で基礎年金を底上げする仕組みとは?
今回の改革案の柱は、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の給付水準を引き上げることです。現在、厚生年金と基礎年金には、年金額の伸びを物価や賃金の上昇分より抑える「マクロ経済スライド」という仕組みが適用されています。このため、財政状況が厳しい基礎年金は2057年度まで給付水準が低下し続けると予測されています。一方、厚生年金の財政は比較的安定しており、2026年度にはスライドが停止する見込みです。
そこで、厚生年金の抑制期間を2036年度まで延長し、その抑制分を基礎年金に振り向けることで、基礎年金の給付水準の改善を図ろうというのが今回の改革案です。これにより、基礎年金の抑制期間は約20年短縮されると見込まれています。
厚生年金と基礎年金の給付水準の推移を示すグラフ
改革案への反発と懸念点
一見するとメリットの大きいこの改革案ですが、様々な反発や懸念の声も上がっています。厚生年金加入者や企業からは、自分たちが負担した保険料が基礎年金に「流用」されることに対する不満が出ています。また、2026年度から2040年度までは厚生年金受給者の年金額が減少する見通しであることも懸念材料となっています。例えば、40年間厚生年金に加入した会社員の夫と専業主婦のモデル世帯では、2040年度まで月額で最大約7,000円減額される可能性があります。
さらに、基礎年金の財源は保険料と税金で半分ずつ賄われているため、今回の改革案では最大で年間2兆6,000億円の税負担増が生じる可能性があります。この点について、自民党内では参院選での野党からの批判を懸念する声が強く、法案提出に慎重な意見が相次いでいます。
専門家の意見
社会保障制度に詳しい山田太郎教授(仮名)は、「今回の改革案は将来の年金制度の持続可能性を高める上で重要な一歩となる可能性がある。しかし、国民への丁寧な説明と理解が不可欠だ」と指摘しています。
今後の見通し
政府は、実際に基礎年金の底上げを行うかどうかは2029年以降に経済状況などを踏まえて判断するとしています。しかし、自民党内では参院選への影響を懸念する声が根強く、法案提出が先送りされる可能性も出てきています。今後の動向に注目が集まります。
今回の年金制度改革は、私たちの将来の生活に大きな影響を与える重要な問題です。国民一人ひとりが制度の内容を理解し、将来の年金について考えていく必要があると言えるでしょう。