トランプ関税戦争の余波：航空業界のサプライチェーンに暗雲、日本の翼はどうなる？

米中貿易摩擦に端を発したトランプ前大統領の関税政策。その影響は航空業界のサプライチェーンにも暗い影を落としています。グローバル分業体制が揺らぎ、航空機の新規導入や整備部品の調達に支障が出ている現状、そして日本の航空機産業への影響について、専門家の意見を交えながら詳しく解説します。

関税戦争、航空機産業のグローバル分業体制を直撃

航空機は世界各国で製造された部品を組み合わせて作られる、まさにグローバル分業の象徴です。胴体、翼、エンジンなど、それぞれの分野で優れた技術を持つ企業が連携し、高性能な航空機を生み出しています。例えば、ボーイングの主力機種B787には約230万個の部品が使用され、そのうち30%が輸入部品とのこと。一次協力会社だけでなく、二次、三次協力会社まで含めると、グローバル貿易の規模はさらに巨大になります。

B787の製造工程

しかし、トランプ前大統領が導入した鉄鋼・アルミニウムへの高関税、さらには幅広い品目に課された追加関税は、この精緻な分業体制に亀裂を生じさせました。航空機部品メーカーであるハウメット・エアロスペースは、ボーイングやエアバスへの部品納入に遅延が生じると発表。主要航空会社からこのような警告が出されたのは初めてであり、関税政策の深刻な影響を物語っています。

日本企業への影響：翼の供給に遅延も？

日本企業もこの影響から逃れることはできません。川崎重工はボーイング787の翼などを供給する主要パートナー。関税によるサプライチェーンの混乱は、日本の航空機産業にも大きなリスクとなります。

川崎重工の航空機部品工場

漢陽大学のハ・ジュンギョン経済学部教授は、「トランプ前大統領はサプライチェーン再編による短期的な苦痛は不可避だと主張していたが、世界の全ての部品を米国で作るのは不可能だ。非合理的な貿易政策を続ければ、再興を目指している米国の製造業こそが大きな損害を被るだろう」と指摘しています。

航空会社は対応に追われる：納期遅延、整備部品不足

関税戦争の影響は航空会社にも波及しています。大韓航空はボーイングからの航空機納入遅延に直面。新型コロナウイルスの感染拡大やロシア・ウクライナ紛争によるサプライチェーンの混乱に加え、関税問題が追い打ちをかけています。格安航空会社（LCC）では、整備部品の調達難が深刻化。エアプレミアは保有する6機のうち1機が部品不足で運航できていない状況です。

韓国航空大学のユン・ムンギル経営学部名誉教授は、「グローバルサプライチェーンの混乱は、部品在庫や財務状況が脆弱なLCCに深刻な打撃を与えている」と警鐘を鳴らしています。