香港での出産ブーム再燃?非香港人妊婦の入境拒否が急増

香港での出産を目指す非香港人妊婦の数が、コロナ禍以降再び増加傾向にあるようです。今回は、香港での出産を取り巻む現状と課題について詳しく見ていきましょう。

香港入境拒否の現状

香港出入境当局の発表によると、2023年には香港戸籍を持たない妊婦1,154人の入境が拒否されました。これは2020年の227人と比較すると約5倍という驚くべき数値です。コロナ禍で一時的に減少したものの、再び増加に転じている現状が浮き彫りになっています。

altalt香港落馬洲入境検問所。増加する入境希望者への対応が課題となっている。

なぜ香港での出産を目指すのか?

2001年の香港裁判所の決定により、香港で生まれた新生児には居住権が付与されることになりました。これが、中国本土からの「出産旅行」ブームの火付け役となったのです。2012年までに約20万人の赤ちゃんが本土出身の妊婦から誕生し、香港の産婦人科病棟は不足する事態に陥りました。

香港政府の対策と現状

この事態を受け、香港政府は2013年以降、香港の病院の予約がない28週以上の非香港人妊婦の入境を制限してきました。しかし、それでも香港での出産を希望する人は後を絶ちません。2019年には4,426件の非香港人による出産が記録され、そのうち84.5%にあたる3,741件が中国本土出身の妊婦によるものでした。

高級人材通行証計画の落とし穴

コロナ禍と国家保安法施行による人材流出への対策として、香港政府は2022年末に「高級人材通行証計画」を導入しました。世界のトップ100大学卒業者などに2年間の就労ビザを発給するこの制度ですが、出産を目的とした本土出身者による利用も確認されています。香港当局は、申告内容と異なる渡航目的が発覚した場合、入境を拒否する可能性があると警告し、取り締まりを強化しています。

コロナ禍の影響と今後の動向

コロナ禍で一時的に減少した香港での出産件数は、2023年には2,396件に増加しました。そのうち78%が中国本土出身者によるものです。入境拒否件数も2022年の498人から2023年には20,026人と40倍に急増しており、出産を目的とした香港への渡航希望者が増加していることが伺えます。香港政府の対策の効果と今後の動向に注目が集まっています。

SNSでの情報共有

中国のソーシャルメディアでは、入境制限を回避するための情報が共有されていると報じられています。 香港政府の規制強化と、それをすり抜けようとする動き。このいたちごっこは今後も続きそうです。

専門家の見解

香港の社会問題に詳しい李博士(仮名)は、「出産旅行は香港の医療資源への負担だけでなく、社会の公平性にも疑問を投げかけている。政府はより効果的な対策を講じる必要がある」と指摘しています。

まとめ

香港での出産ブームの再燃は、居住権取得を目的とした出産旅行の根深さを改めて示しています。香港政府の対策強化と、それを回避しようとする動き。この複雑な問題は、今後も香港社会の大きな課題として残り続けるでしょう。