2024年の世界の死刑執行件数が、2015年以来の高水準に達したことが、アムネスティ・インターナショナルの報告書で明らかになりました。世界中で死刑廃止の動きが進む一方で、依然として深刻な人権問題として残っている現状に、改めて注目が集まっています。
死刑執行件数の増加:イラン、イラク、サウジアラビアが突出
アムネスティ・インターナショナルの報告書によると、2024年の世界の死刑執行件数は計1518件。このうち、イラン、イラク、サウジアラビアの3カ国で1380件と、全体の9割以上を占めています。アメリカでも25件の執行が確認されました。
alt
一方で、死刑を執行した国の数は15カ国と、2年連続で過去最少を記録。アムネスティ・インターナショナルのアグネス・カラマード事務局長は、「潮目が変わりつつある」と述べ、死刑制度廃止への期待を示しました。
中国、北朝鮮、ベトナムのデータは未計上:実際の人数はさらに多い可能性
報告された1518件という数字には、中国、北朝鮮、ベトナムでの執行件数は含まれていません。これらの国では死刑に関する情報が国家機密として扱われており、正確な数値の把握が困難です。特に中国では毎年数千人が処刑されていると推定されており、実際の死刑執行件数は報告された数字をはるかに上回る可能性があります。
麻薬関連犯罪への死刑適用:人権法違反との指摘も
報告書は、死刑執行件数増加の要因として、デモ参加者への弾圧手段としての利用と、麻薬関連犯罪への適用を挙げています。2024年の死刑執行の4割以上が麻薬関連犯罪によるもので、アムネスティ・インターナショナルは、このような人権法に反する行為を強く非難しています。
世界的な死刑廃止の動き:日本での再審無罪判決も
世界的には死刑廃止の流れが加速しています。2024年にはジンバブエで通常の犯罪に対する死刑が廃止されました。日本では、袴田巌さんの再審無罪判決が大きなニュースとなりました。これは、死刑制度の抱える問題点を改めて浮き彫りにする出来事でした。
国連総会でも死刑執行停止を求める決議案が可決
国連総会でも、加盟国の3分の2以上が死刑執行停止を求める決議案に賛成しています。国際社会全体で死刑廃止に向けた取り組みが強化されていることが伺えます。
死刑制度の未来:さらなる議論と国際協力の必要性
死刑制度は、人権、倫理、犯罪抑止効果など、様々な観点から議論が続けられています。国際社会の協力と継続的な対話を通じて、死刑廃止に向けた具体的な行動が求められています。