韓国新大統領、李在明氏の対日スタンス変化とその真意

韓国の新大統領に就任した李在明(イ・ジェミョン)氏は、過去の行動や発言から、日本ではしばしば「反日の旗手」と見なされてきた。京畿道知事時代には「親日残滓清算プロジェクト」を立ち上げ、具体的な清算作業を行った。また、「軍事的に日本は依然として敵性国家」や、福島原発処理水放出に対する「核汚染水の放流は太平洋沿岸国に対する戦争を宣言したもの」といった過激な発言が知られている。こうした過去の言動から、多くの日本人は李氏が大統領になっても日韓協力に積極的になるとは考えていなかった。

韓国大統領となった李在明氏韓国大統領となった李在明氏

李在明氏、大統領候補・当選後の変化

しかし、大統領選挙が現実味を帯びてくるにつれて、李在明氏の対日スタンスは大きく変化した。彼は「日本国民の親切さ、勤勉さ、美しい風景に魅了された」「日本への愛情がとても深い」などと、以前とは異なる友好的な発言をするようになった。さらに、大統領候補としての表明後には、「現実的に韓米同盟が非常に重要であり、韓米日協力関係も非常に重要」「日本は重要なパートナー」「前向きな未来志向で対応、堅固な韓日関係の土台を築く」と述べ、日韓関係の前進に強い意欲を示した。そして、大統領就任宣誓では、「堅固な韓米同盟を土台に韓米日の協力を強固にし、周辺国との関係も国益と実用の観点からアプローチする」と言明した。この急な立場の変化は、日本国内で大きな戸惑いを持って受け止められている。

スタンス変化の背景と真意

李在明氏のこのような立場の変化は、冷静に分析すれば驚くべきことではない。貧困家庭出身で人権弁護士から社会活動家としてキャリアを始めた彼は、戦争被害者には同情的であった一方、これまでの政治キャリア(城南市長、京畿道知事)では中央政府や国会議員の経験がなく、外交とは無縁だった。そのため、過去の発言は外交的な考慮を一切含まない、市民向けの過激な言動が中心だったと言える。これは、彼が“裸一貫”から政治家として名を上げるための“人気取り政策”の一環としての側面が強かった。したがって、彼の思想が根っからの極度な「反日」であったかどうかは一概には言えない。

大統領という職責に就けば、外交の最高責任者となる。反日感情を煽ることは、現在の韓国が直面する経済状況や、朝鮮半島の地政学的な状況から見て、国益にとって大きなマイナスとなる。こうした状況を踏まえ、李氏は国益を最優先する「実用主義」的な立場を取ることに方針転換したと考えられる。

残る懸念と日本の対応

一方で、李在明氏には過去の言動が示すように「反日の素地」が残っている可能性も否定できない。日韓関係が再び緊迫するような場面で、尹錫悦前大統領のように、日本との協力関係を守るために自らを犠牲にすることができるかは不透明である。もし韓国が再び反日的な姿勢に逆戻りすれば、それは日本だけでなく韓国自身の国益も損なうことになる。日本にとっても、増大する北朝鮮の脅威に対抗するためには、日米韓の安全保障協力が不可欠であり、米国のインド太平洋地域への関心を維持するためにも、韓国の強固な協力姿勢は欠かせない。李在明氏の対日協力姿勢が盤石でないという懸念があるならば、日本としては、そうならないよう韓国に対して積極的に働きかけていくことが重要である。

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