イスラエルによるイランへの攻撃が続く中、特にイラン国内のブシェール原発のような原子力発電所が標的となった場合、チェルノブイリに匹敵するような甚大な核事故につながる可能性が警告されており、国際社会、特に周辺国で懸念が高まっています。
2025年6月18日、イスラエルの攻撃によりイランのテヘラン市内に上がる煙。イラン核施設への懸念が高まる状況を示す一コマ。
ロシアの警告とイスラエルの発表
19日(現地時間)、ロシアの国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチェフ社長は、リアノーボスチ通信に対し、ブシェール原発が稼働中に攻撃されれば、「チェルノブイリ級の災難が発生する」と強く警告しました。ロスアトムは、このイランの原発の建設に関わり、現在も追加施設の建設を進めています。当初、イスラエル軍報道官はアラク重水炉施設やナタンズ核施設と共にブシェール原発も攻撃したと発表しましたが、後にこの言及はミスだったと訂正し、攻撃の有無については確認も否認もできないとして情報が錯綜しました。これに対し、ロシア外務省のザハロワ報道官は記者会見で、イスラエルに対しイランの核施設への攻撃を直ちに中断するよう求めるとともに、「ロシアの専門家も運営に携わるブシェール原発の安全に対する懸念」を表明しました。また、ロシア大統領府のペスコフ報道官はタス通信に対し、もし米国がイスラエルとイランの紛争に介入すれば「紛争の地理的範囲が拡大する」との見解を示し、プーチン大統領がこの複雑な状況の解決策を模索していると伝えました。
ペルシア湾岸諸国の懸念
ブシェール原発は、イランの首都テヘランよりもオマーン、バーレーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)といった親米アラブ国家に近いペルシア湾(ガルフ海域)沿岸に位置しています。このため、周辺国では核事故発生時の影響に対する懸念が特に強いです。米CNNによると、オマーンでは万一の原発事故に備え、屋内に避難し、窓や扉を閉め、空調や換気システムを止めるべきだといった対処法がソーシャルメディアを通じて広く共有されています。他の中東諸国でも、メディアが相次いで放射能流出事故への対応策を報じるなど、核爆発による放射性物質への懸念が高まっていることがCNNによって伝えられています。
淡水化への影響と水供給リスク
特に砂漠地帯の国々では、イランと共有するガルフ海域の海水を淡水化して生活用水として利用しているため、ブシェール原発で大規模な核事故が発生した場合、この海水が深刻な汚染を免れないとみられています。この淡水化プラントへの影響は、水供給のリスクと直結します。今年3月、カタールのアルサニ首相は米メディアのインタビューで、ブシェール原発が爆発した場合の被害を分析した結果、カタール国民は3日以内に水が枯渇すると述べ、同様のリスクはクウェートやUAEにも及ぶと指摘しました。
イランのブシェール原発への攻撃可能性は、単なる軍事衝突を超え、チェルノブイリ級の災難と表現される深刻な核事故リスクと、ペルシア湾岸諸国における水供給を含む生活基盤への壊滅的影響をもたらす懸念があり、国際社会が注視しています。