トランプ氏がイラン・イスラエル停戦を投稿、中東情勢の行方は?東大専門家が解説

トランプ大統領が自身のSNSに、イランとイスラエルが停戦に合意したと投稿しました。しかし、両国からの正式な発表はまだありません。中東の状況は今後どのように展開するのでしょうか。『ABEMA ヒルズ』では、東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授に詳しく話を聞きました。この記事では、報道された停戦合意の背景、最近の米イラン間の軍事行動、そして中東情勢に関する専門家の見解をお伝えします。

トランプ大統領の投稿とイラン高官の同意報道について、鈴木特任准教授は「トランプ大統領としては、イランとアメリカの対立をここで終わりにしたい、幕引きにしたいという意図を感じる。またアメリカが主導権を握って地域情勢の安定化を図る。そうしたリーダーシップを示したいという意図も感じ取れる」と分析しています。

米軍によるイラン核施設への空爆とその影響

[トランプ氏がイラン・イスラエル停戦を投稿、中東情勢の行方は?東大専門家が解説

東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授](https://news.yahoo.co.jp/articles/8b000e2d7122d830cff03ecd81c5c7d9c24a56db/images/000)

報道によると、6月21日にはアメリカ軍がイランの核施設3カ所に空爆を実施しました。標的となったのは、フォルドゥ、ナタンズ、そしてイスファハンの施設です。これらの施設について、鈴木准教授は次のように説明しています。「フォルドゥとナタンズに関しては核関連施設であり、核物質の濃縮を行っていると言われています。一方で、イスファハンに関しては、実験炉を備えた核技術の研究所という位置づけである」。これらの場所はイランの核開発において重要な役割を担っていると見られています。

この空爆では、米軍は14発のバンカーバスターを実戦で初めて使用したとされています。特にフォルドゥは地下深くに建設されていると言われていますが、これらの地下核施設は破壊されたのでしょうか。鈴木准教授は「特にフォルドゥは地下深くにあると言われている。衛星画像で確認されている限りでは、少なくとも2箇所に3発ずつのバンカーバスターが打ち込まれている。少なくとも着弾しているのが確認されている。地下の施設に関して何かしらの影響があったと考えるのが妥当だが、実際の被害の大きさは未だに明らかではない」と述べています。また、「イラン当局の話として『核関連物質が事前に持ち出された』といった情報もある」とも触れ、被害の全容把握は困難である可能性を示唆しました。

イランの報復攻撃:カタールの米軍基地へ

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イランによるカタールの米軍基地へのミサイル攻撃を示すイメージ](https://news.yahoo.co.jp/articles/8b000e2d7122d830cff03ecd81c5c7d9c24a56db/images/001)

アメリカ軍による核施設への空爆に対し、イラン側は報復としてカタールにある米軍基地にミサイル攻撃を行いました。このイランの行動について、鈴木准教授は「イランによる周辺の米軍関連施設への攻撃。これはアメリカとしても想定の範囲内だったと思う」との見方を示しました。さらに、今回の攻撃が報道通りの内容であれば、「イランは核関連施設に打ち込まれたのと同じ本数のミサイルでカタールの米軍基地を攻撃しているということである。つまりはイラン側としてもかなり抑えた形で反撃をしたというポーズが取れるような攻撃であった。象徴的な意味合いが強い攻撃であったと言えると思う」と分析し、イランが意図的にエスカレーションを抑えようとした可能性を指摘しました。

イランはアメリカ側に事前に攻撃を通知し、ミサイルは迎撃されて人的被害はなかったと報じられています。イランのこのような行動の目的は何だったのでしょうか。鈴木准教授は「イランとしてはアメリカに反撃をしないというオプションは取れなかったと考えるべきであろう。国内世論に対して、または体制の対面、メンツと言っても良いかもしれない。何かしら象徴的な形であっても反撃が必要だったということだと思う」と解説します。そして、「ミサイルを限定的な本数に絞り、かつ事前通告をした上で攻撃をした。国内向けのポーズが主な目的と考えられる」と述べ、面子を保ちつつも、さらなる衝突を避けるための計算された行動だった可能性を示唆しました。

今後の中東情勢の見通し

トランプ大統領の停戦合意に関する投稿は、米イラン間の対立の終結、またはその幕引きを図り、アメリカが地域情勢の安定化においてリーダーシップを発揮したいという意図に基づいていると鈴木准教授は分析しています。報道された停戦合意はまだ両国による正式な発表がなく、米軍によるイラン核施設への攻撃と、それに対するイランの報復攻撃があったばかりです。今後の中東情勢は引き続き緊張を伴う可能性があり、関連する動向が注目されます。

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