ヘグセス米国防長官は先週、ホワイトハウスへの事前通告なしにウクライナへの兵器の搬送停止を承認し、政権内部に混乱をもたらした。事情に詳しい情報筋5人がCNNに明らかにした。この想定外の動きに対し、関係者らは停止が実施された理由の把握や米連邦議会、ウクライナ政府への説明に追われる事態となった。
トランプ大統領の反応と事態の推移
トランプ大統領はこの兵器搬送停止について、8日の閣議で自身の責任による措置ではないことを示唆した。大統領は、自ら搬送停止を承認したのか問われたが明確な回答を避け、米国は今後も防御用兵器をウクライナに搬送し続ける意向だとのみ述べた。搬送停止を承認したのは誰かとの質問には、「分からない。こっちが聞きたい」と答えた。この事案は、トランプ政権内部、特にヘグセス長官が率いる国防総省における政策決定がしばしば無計画に行われる実態を浮き彫りにしている。今回の決定はヘグセス氏が今年に入って2度目に行ったウクライナへの兵器搬送停止だが、複数の情報筋によれば、国家安全保障担当の高官らにとっては不意を突かれた形となった。情報筋3人によると、2月に下された最初の同様の決定はすぐに撤回された。今回も同様で、7日夜にはトランプ氏がヘグセス氏の署名した停止措置を覆す形で、ウクライナへの兵器搬送は継続されると発表した。
関係者への事前通告欠如と政権内の課題
ウクライナを担当するケロッグ特使や国家安全保障担当の大統領補佐官を兼務するルビオ国務長官も、兵器搬送の停止を事前には知らされておらず、報道から事態を把握したという。ある政権高官と情報筋2人が明らかにした。国防総省のウィルソン報道官は声明でCNNの取材に対し、ヘグセス氏は部分的にではあるが、トランプ氏に対し軍事支援や兵器の在庫について評価するための枠組みを提供したと述べ、そのような評価は政権全体での協調した取り組みだったとした。しかし、情報筋のうち2人は、ヘグセス氏がホワイトハウスに搬送停止を通告しなかったのは、周囲に補佐官や信頼できる助言者が不足していることに原因があると示唆した。そうした人物がいれば、重要な政策決定を行う際に、省庁間での連携強化を本人に強く促した可能性があると指摘されている。
ウクライナへの兵器供与停止を承認したヘグセス米国防長官
停止撤回とパトリオットミサイル再開の指示
先週、兵器の搬送停止について把握したトランプ氏はすぐにヘグセス氏に対し、少なくとも一部の兵器の搬送再開を指示した。具体的には、地対空ミサイル「パトリオット」用の迎撃ミサイルが含まれる。これは、ロシアがウクライナの民間人に対しミサイルや無人機(ドローン)を使用した容赦のない攻撃を加えている状況下で、ウクライナ防衛のための重要な兵器とされている。情報筋によれば、トランプ氏はウクライナへの兵器搬送停止によって、この段階でロシアに「勝利」を与えることにはどちらかと言えば消極的に見えるという。トランプ氏は最近、ロシアのプーチン大統領に対する不快感を表明している。この背景には、ここへ来て一段と鮮明になっている、プーチン氏側にウクライナとの和平協議に臨む意思がない状況がある。
兵器供与停止の背景とコルビー国防次官の役割
情報筋のひとりがCNNに明らかにしたところによれば、トランプ氏は先月、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談に向かう途中でヘグセス氏に対し、米軍の兵器在庫に関する評価を提供するよう求めていた。だが、情報筋の3人によると、トランプ氏はそうした評価の一環としてウクライナ向けの兵器の搬送停止をヘグセス氏に具体的に指示したわけではなかった。停止を進言したのは、コルビー国防次官(政策担当)だったと、情報筋5人は述べている。コルビー氏はかなり以前から、米軍の兵器を大量にウクライナ支援へ回すことに対して懐疑的な立場だったという。コルビー氏は停止をファインバーグ国防副長官に進言し、最終的にヘグセス氏がこれを承認した。そこには、停止措置がトランプ氏の掲げる「米国第一」の政策に合致するとの認識があったと、ヘグセス氏の考え方に詳しい情報筋の一人が明らかにした。事情に詳しい情報筋2人によれば、国防総省の当局者らはこの数日間で連邦議会の職員に対し、停止措置の必要性を主張し、米軍兵器の在庫不足をその理由に挙げていた。しかし、これらの情報筋は、連邦議会自体は事前に十分な説明を受けておらず、国防総省が重要性や緊急性を示唆する兵器の不足に関して一切情報を与えられていなかったと述べている。
結論
今回のヘグセス国防長官によるウクライナ向け兵器搬送の一時停止とその後のトランプ大統領による撤回は、トランプ政権における政策決定プロセスの混乱と、政権内部の連携不足を改めて浮き彫りにした。特に国防総省における独断的な決定とその後の説明の必要性は、今後のウクライナ支援を含む外交・安全保障政策における課題として残るだろう。
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