第27回参議院選挙、与党過半数割れ現実に?石破政権の命運と日米交渉への波紋

第27回参議院選挙が7月20日朝から全国各地で投票されており、各社の情勢調査からは、与党(自由民主党・公明党)が非改選議席を含めても過半数を割り込む可能性が浮上しています。長引く物価高や自民党の裏金問題が石破茂政権に逆風を吹かせる中、保守層の受け皿として台頭する右派の参政党がどれだけ議席を伸ばすかも注目点です。与党が過半数を失った場合、石破首相の責任問題に発展することは避けられず、日本経済や日米間の通商交渉にも影響が及ぶと懸念されています。

第27回参議院選挙の投票日、東京の投票所で投票する有権者第27回参議院選挙の投票日、東京の投票所で投票する有権者

参議院選挙の概要と投票状況

今回の参議院選挙では、定数248議席のうち改選となる124議席に加え、東京選挙区の欠員1議席を合わせた計125議席が争われています。選挙区選には350人、比例代表選には172人、合計522人の候補者が立候補しました。総務省の発表によると、午前11時現在の全国投票率は10.99%で、前回2022年の参議院選挙の同時点と比較して0.56ポイント高い水準です。特に注目すべきは期日前投票の動向で、7月18日時点で有権者の20.58%に当たる2145万0220人がすでに投票を済ませており、前回の最終的な期日前投票者数1961万3475人を既に上回っています。これは、有権者の関心の高さを示すものとみられます。

与党の苦戦と情勢調査の結果

自民党と公明党は、昨年10月の総選挙で大敗し、衆議院ではすでに「少数与党」の状態にあります。参議院でも過半数を維持するためには、両党合わせて50議席の獲得が必須となります。しかし、読売新聞が7月16日に公表した12日から15日実施の情勢調査では、勝敗の鍵を握る全国32の「1人区」のうち、自民党が優勢とされたのはわずか4選挙区にとどまり、序盤の7選挙区から減少しました。最終的な獲得議席数は、自民党が24~39、公明党が7~13と予測されており、両党で50議席の確保は「厳しい情勢」にあるとされています。朝日新聞や共同通信も、与党の過半数維持は「困難」あるいは「微妙」と報じており、与党にとって厳しい選挙戦であることが浮き彫りになっています。

石破政権の危機と連立交渉の模索

政府・与党内では7月初旬頃まで、現有議席を16下回るものの、過半数維持の「勝敗ライン」は達成可能との楽観的な見方が主流でした。仮に過半数を割り込んだとしても、その差が数議席にとどまれば、石破政権は野党との連立交渉を通じて続投を目指す考えが一般的でした。連立相手としては、財政規律を重視する財務省や自民党内の財政健全化派からは立憲民主党を、また旧安倍・菅政権幹部や経済産業省などからは国民民主党や日本維新の会を望む声が聞かれていました。しかし、最新の情勢調査を受けて、与党の獲得議席が40議席台前半など、大幅に過半数を割り込む可能性が浮上し始めたため、政府内では「石破首相の続投は党内で通じない」という声が複数聞かれるようになっています。

過半数割れがもたらす影響:識者の見解

ユーラシア・グループの日本アジア貿易ディレクターであるデービッド・ボーリング氏は、与党が大敗した場合、石破首相の辞任は避けられないとの見方を示しています。同氏は「そうなれば誰が後任となるのか、日米貿易交渉にどのような影響を及ぼすのか、多くの疑問が生じる」と述べ、政治の不透明感を指摘しました。

一方、日本の情勢について投資家に助言するロールシャッハ・アドバイザリーのジョセフ・クラフト代表などは、日米間の関税交渉が重要局面にある中で、自民党が党総裁の交代に踏み切る可能性は低いとみています。しかし、日米交渉に携わる経済官庁幹部からは「石破首相が退陣すれば、赤沢亮正経済再生担当相の辞任も確実。交渉はゼロからのスタートになる」と懸念の声が上がっています。別の経済官庁の中堅幹部は「8月6日に広島で開かれる平和記念式典に、いつ退陣するか分からない首相が参列するのは失礼だ」と語り、自民党総裁選の有無に関心を示しました。ある財務省幹部は「過半数割れならば、自民党総裁が首相に選ばれる保証もなくなる。前代未聞のカオスだ」と、深い危機感を表明しました。

注目集める参政党の台頭とその波紋

今回の選挙では、「日本人ファースト」を掲げる参政党の動向も大きな注目を集めています。世論調査では10~15議席を獲得する可能性が指摘されており、これは米国や欧州で台頭したポピュリズムが日本にも本格的に根付き始めた兆候と見る向きもあります。2020年に結党した参政党が、外国人の受け入れ問題を選挙の争点として有権者の関心を引き付けたことで、自民党を含む他の政党もこの問題を取り上げざるを得ない状況に追い込まれました。笹川平和財団の渡部恒雄上席フェローは「自民党が右に寄りすぎれば、中道層の支持を失う」と指摘する一方で、「だが右派を失えば別の問題が生じる。極めて難しい綱渡りだ」と述べ、自民党が直面する困難な舵取りを強調しました。

まとめ

今回の参議院選挙は、石破政権の今後を大きく左右する転換点となる可能性があります。与党が過半数を割り込む事態となれば、首相の責任問題から日米関係や経済政策への影響まで、広範な波紋を呼ぶことは避けられません。また、参政党の台頭は、日本の政治における新たな潮流、特にポピュリズムの本格的な到来を示すものとして注目されます。選挙結果が確定した後、日本政治は新たな局面を迎え、その動向は国内外から大きな関心を持って見守られることとなるでしょう。

参考資料

  • ロイター通信 (2025年7月20日) – 第27回参議院選挙関連報道
  • Yahoo!ニュース (2025年7月20日) – 第27回参議院選挙関連報道