世界的に「最高齢ランナー」として知られたインド系英国人のファウジャ・シン氏が、14日、インド北西部で交通事故により亡くなりました。公式な出生記録はないものの、114歳だったとされており、その訃報は世界中のスポーツ愛好家や関係者に深い悲しみをもたらしています。ターバンを巻いた姿から「ターバンを巻いたトルネード」と称され、数々のフルマラソンを完走した彼の生涯は、多くの人々にインスピレーションを与え続けてきました。
シーク教徒のターバンを巻いて笑顔を見せるファウジャ・シン氏。中央でランニングクラブの活動中に撮影されたとみられる。
事故の詳細とシン氏の背景
地元メディアの報道によると、シン氏は故郷であるインドのパンジャブ州の村の道路を横断中に車にはねられ、頭部への強い衝撃が致命傷となり、搬送先の病院で死亡が確認されました。
シン氏は1911年4月生まれと説明しており、約30年前に妻を亡くした後、長男との同居のため英国に移住しました。この頃から近所の公園でランニングや長距離の散歩を始め、高齢でのランニングキャリアをスタートさせました。
驚異のフルマラソンデビューと輝かしい功績
フルマラソンが42.195キロあることすら知らなかったというシン氏ですが、2000年に初めて出場したロンドン・マラソンを6時間54分という驚異的なタイムで完走しました。これは当時の同年代における世界記録を1時間近くも更新するもので、瞬く間に世界中の注目を集めました。
その後も彼の快進撃は続き、2013年に引退するまでにロンドン、カナダのトロント、米ニューヨークなどでフルマラソンを計9回完走しました。シーク教徒としての誇りを象徴するターバンを常に着用し、その姿は世界各地の大会で親しまれ、「最高齢のランナー」としての地位を確立しました。
世界的アイコンとしての活躍と晩年
その類稀なる業績から「世界最高齢のランナー」としてその名は世界中に広まり、スポーツ用品大手アディダスの広告キャンペーンでは、元イングランド代表サッカー選手のデビッド・ベッカム氏らと共に起用されるなど、スポーツ界のアイコンとしても活躍しました。
晩年は息子が暮らすインドとロンドンを行き来する生活を送り、今年6月に英BBCの取材に応じた際には、「足を鍛えるため」に毎日数マイル歩いていると語るなど、生涯現役の精神を示していました。
シン氏の訃報に対し、インドのナレンドラ・モディ首相はX(旧ツイッター)で「信じられないほど強い心を持つ素晴らしいアスリートだった。深い悲しみを覚える」と追悼の意を表しました。ファウジャ・シン氏の不屈の精神と、限界に挑み続けた人生は、今後も多くの人々に勇気を与え続けることでしょう。
引用元: https://news.yahoo.co.jp/articles/1dfa6f28b0a041798be22d146a86f85b99f93d9