パレスチナ自治区ガザ地区における人道危機が深刻化する中、フランスに続き英国もパレスチナ国家承認への傾斜を示し、国際社会からの「2国家共存」を求める圧力は、イスラエル政府に対してかつてないほど強まっている。支援物資の搬入を厳しく制限してきたネタニヤフ政権は、現在、国際的な厳しい立場に置かれている。
国際社会からの圧力と「2国家共存」の再燃
ガザへの攻撃を続けるイスラム原理主義組織ハマスを標的とするネタニヤフ政権は、ガザの「飢餓」がハマスが停戦協議などを有利に進めるために作り出した虚構であると主張してきた。しかし、イスラエルの主要な後ろ盾であるトランプ前米大統領でさえ、ガザでは「多くの人が深刻に飢えている」と認める事態となり、イスラエルの主張の正当性が揺らぎ始めた。
フランスと英国が支持を表明した「2国家共存」案は、パレスチナがガザとヨルダン川西岸を領土とする独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を図る構想である。この概念は一般的に1993年のオスロ合意が起点と解釈されている。対パレスチナ強硬派として知られるネタニヤフ首相は2014年にパレスチナ自治政府との交渉を中断し、これによって2国家共存案は事実上形骸化していた。同氏からすれば、一度棚上げされたはずのこの構想が、現在の深刻な人道危機によって再び国際的な注目を集める格好となっている。
イスラエル政府の強硬姿勢と正当性主張
こうした国際的な圧力が高まる中でも、ネタニヤフ政権の閣僚からは、戦闘と飢餓の問題を区別し、ハマスとの戦闘を継続すると強調する声が相次いでいる。ニュースサイト「タイムズ・オブ・イスラエル」は今月29日、イスラエルのサール外相が「(国際的な圧力が)どれほど強まっても、(戦闘終結は)あり得ない」と述べたと伝えた。これは、自衛権に基づく戦いであると改めて主張し、国際社会にその正当性を求めようとする狙いがあるとみられる。しかし、イスラエルが今年3月以降、戦闘と並行してガザへの物資搬入を厳しく制限してきたことは紛れもない事実であり、飢餓を巡る責任回避には限界が見え始めている。
ガザ地区南部のラファ検問所に積み上げられた支援物資。国際社会が飢餓の深刻化を懸念する中、パレスチナへの人道支援の重要性を示唆する光景。
ガザの人道危機深化と国際世論の高まり
ガザ保健当局は29日、イスラエルとハマスの戦闘が始まった2023年以来の死者数が6万人を超えたと発表した。さらに同日、イスラエルが米国と5月下旬から主導している独自の物資配給を巡り、過去24時間に配給拠点周辺で22人が死亡し、これまでの死者数は合計1179人に達したと報告した。これらの悲惨な数字は、ガザ地区における人道状況の極度の悪化を如実に示しており、イスラエルに対する国際的な反発と世論は今後さらに強まることが予想される。
国際社会からの圧力、主要同盟国からの警告、そして悲惨な人道状況という複合的な要因により、ネタニヤフ政権はかつてないほどの孤立を深め、その政策は今後一層の国際的な批判に晒されることとなるだろう。
参考文献
- Yahoo!ニュース (元の記事提供元)