鈴木馨祐法相は30日、日本記者クラブでの会見において、外国人との「秩序ある共生社会」の実現に向けて「国民の支持や理解を丁寧に得ていくことが必要だ」と述べました。欧州諸国での難民・移民政策が社会の分断や政治的混乱の要因となっていることに触れ、外国人受け入れにおいては国民の安全・安心を確保し、不公平感をなくすことが不可欠であると訴えました。
欧州の教訓と日本における課題
鈴木法相は、外国人政策が前回の参院選で大きな議論の的となったことに言及し、SNS(交流サイト)上では真偽が定かでない情報によって国民の不安が高まる状況があったと指摘しました。これは、欧州での事例が示すように、外国人受け入れに対する国民感情が政策の成否を大きく左右することを示唆しています。日本も同様のリスクを抱えており、開かれた社会を目指す上で、国民の懸念に真摯に向き合う姿勢が求められています。
日本の外国人受け入れの現状と将来推計
現在、日本の人口に占める外国人の割合は3%弱ですが、2070年には10%を超えるとの推計があります。しかし、人口減少のスピードによっては、この予測が約30年前倒しになる可能性も紹介されました。これにより、外国人材の受け入れは日本が避けては通れない課題であり、早期かつ体系的な対策が不可欠であると鈴木法相は強調しました。
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日本記者クラブにて外国人政策を説明する鈴木馨祐法相
法務省の対策と地方からの提言
長期滞在する外国人の増加に伴い、地域によっては摩擦が生じている現状も指摘されています。これに対し、法務省は今年5月から「不法滞在者ゼロプラン」を実施しており、2030年末までに退去強制が確定した外国人の数を半減させることを目指しています。また、外国人の就労可能な在留資格についても必要に応じて見直すなど、「開かれた日本を実現するためには国民の安全・安心を確保しないといけない」との考えを示しました。
一方で、全国知事会は同日、外国人の受け入れと多文化共生社会の実現に向けた提言を鈴木法相に提出しました。この提言では、多文化共生施策を一元的に担う司令塔組織の新設や、国と地方自治体が取り組む施策の根幹となる体系的・総合的な基本法の策定が求められています。鈴木法相は会見で「政府全体としてこれからの時代に即した対応ができる組織の必要性はあると考えている」と述べ、地方の声を重視する姿勢を見せました。
結び
外国人との共生社会の実現は、人口減少が進む日本にとって喫緊の課題であり、その成功には国民の理解と信頼が不可欠です。政府は「不法滞在者ゼロプラン」のような具体的な対策を進めつつ、地方自治体の提言にも耳を傾け、包括的な基本法や司令塔組織の設置を検討するなど、未来を見据えた政策を推進していく必要があります。国民の安全と安心を確保しつつ、多様な文化を持つ人々が共に生きる豊かな社会を築くための努力が今後も求められます。