スコットランド訪問中に撮影されたドナルド・トランプ前米大統領の「手」の写真がSNS上で急速に拡散し、その健康状態に対する懸念が再燃している。写真には、トランプ氏の手が腫れ上がり、痣のような跡が見られると指摘されており、中には「メイクで隠しているのではないか」との臆測も呼んでいる。79歳という年齢から、大統領としての執務能力に疑問を呈する声も上がっている状況だ。
ドナルド・トランプ前大統領の腫れと痣が見られる左手のクローズアップ写真。スコットランド訪問時に撮影され、健康状態に関する新たな懸念を引き起こした。
「慢性静脈不全」診断と背景
ホワイトハウスは今月初め、トランプ氏が「慢性静脈不全(CVI)」と診断されたことを公表した。主治医はこの症状を「良性かつ一般的」と説明し、命に関わるものではないと強調している。CVIは主に下肢の静脈に血液が滞留し、心臓への戻りが滞る状態で、症状として脚のむくみや皮膚の変色が見られることがある。この発表は、各地で撮影された写真に足のむくみや手の痣が写っていたことを受け、SNS上で健康記録の公開を求める声が高まった後にされたものだ。
スコットランド訪問での再燃
トランプ氏の健康状態が再び注目されたのは、最近のスコットランド訪問時だった。EU首脳との会談中に撮影された写真が拡散されると、X(旧Twitter)では「トランプ氏のCVIの兆候がメイクで隠されている」といった投稿が多く見られた。民主党系の活動家は腫れた手の写真を投稿し、「トランプ氏は健康に問題がある」とコメント。別のユーザーも「メイクで隠すほど悪化しているのでは」と反応した。トランプ氏自身は昨年の大統領選で当時のバイデン大統領の高齢を批判していたが、今や彼自身の年齢と健康が議論の的となっている。
ホワイトハウスの見解と医師の証言
ホワイトハウスの報道官カロライン・レビット氏は、「大統領は引き続き健康そのものである」として健康不安を一蹴した。記者会見では、医療チームが「深部静脈血栓や動脈疾患の兆候は見られない」とし、CVIによる痛みもないと述べた。レビット氏はまた、手の痣は「頻繁な握手やアスピリンの服用」によって皮膚が刺激されたせいだと説明している。トランプ氏の主治医ショーン・バルバベラ医師はメモの中で、「精密検査の結果、慢性静脈不全が確認された。これは70歳以上の人に多く見られる良性かつ一般的な症状である」と記した。
血管専門医が指摘するリスク
一方で、シカゴ大学医学部の血管専門家ブライアン・フナキ氏は、CVIそのものは「命に関わるものではないが、脚の静脈内に血栓ができやすくなる可能性がある」と警告する。最悪の場合、その血栓が剥がれて肺に移動し、「命の危険がある肺塞栓を引き起こすこともある」と指摘した。こうしたリスクに対処するため、一部患者には抗凝固剤や下大静脈フィルターといった治療が行われる場合もある。
トランプ前大統領の健康状態をめぐる議論は、ホワイトハウスや医療チームからの詳細な説明と「健康そのもの」という強調にもかかわらず、今後も簡単には収まる気配がない。特に高齢の政治指導者の執務能力は、選挙戦を控える中で引き続き世間の高い関心を集めるテーマであり、今回の手の写真がその議論に新たな火種を投じた形となった。