北朝鮮の制裁回避行為と中国の黙認:国連決議を無視したタンカーの動き

国連のブラックリストに指定された北朝鮮のタンカーが、中国の領海内で自身の位置情報を送信していたことが明らかになった。これは、北朝鮮への違法なエネルギー輸送を禁じた国連制裁決議を公然と無視する行為であり、当該船舶の押収・検査を求める国連決議にも反する深刻な問題提起となっている。

国際制裁下での石油輸送に関わるタンカー国際制裁下での石油輸送に関わるタンカー

中国領海での北朝鮮タンカーの活動実態

北朝鮮専門ニュースサイトのNKプロは7月31日、船舶追跡サービス「MarineTraffic」のデータを引用し、少なくとも5隻の北朝鮮タンカーが7月に中国の領海に侵入したと報じた。これらのうち4隻は国連制裁の対象となっていた。北朝鮮が石油を輸入すること自体は禁止されていないものの、国連によって年間50万バレルの上限が課されており、各国には北朝鮮への石油出荷量を国際機関に報告する義務がある。これは、G7による制裁回避のため「影の船団」を運用しているロシアの事例とも類似しており、今回の事態は対北朝鮮制裁が骨抜きになりかねないとの懸念を強めている。

NKプロが収集したデータは、北朝鮮船舶がロシア極東から石油を受け取っていた可能性、そして今後も中国とロシアという主要な同盟国の庇護のもとで輸入を継続する可能性を示唆しており、国際的な制裁体制の有効性に疑問を投げかけている。本件に関して、本誌は中国外交部にコメントを求めている。

ロシア極東と中国沿岸部を拠点とする違法な石油輸送

NKプロの分析によると、問題の5隻の北朝鮮タンカーは、石油を受け取るために中国の領海に向かった可能性が高い。これらの船舶には、国連制裁対象の「ソンウォン2」「アンサン1」「クムジンガン3」「シンピョン9」が含まれている。特に「ソンウォン2」以外の3隻は、ロシア極東の沿海地方にあるボストチヌイ港の石油積み出し施設に頻繁に出入りしており、同港が北朝鮮向け石油輸送の主要な拠点となっている実態が浮き彫りになった。

制裁対象の4隻は、いずれも今月中に中国東部または東南部の沿岸、具体的には浙江省舟山市や台州市、福建省の近海で位置情報を発信していた。残る1隻の「チョンリョンサン」は制裁対象ではないものの、国連の報告書では、同船が北朝鮮の主要港である南浦港への石油製品輸送や、違法な瀬取り(船舶同士が接舷し積み荷を移送する行為)に関与している疑いが指摘されている。

今回の北朝鮮タンカーによる中国領海内での活動は、国連制裁の実効性を巡る国際社会の課題を改めて浮き彫りにしている。中国政府の対応は、今後の対北朝鮮制裁の維持、ひいては地域の安定に大きな影響を与えるだろう。

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